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人文学研究科長からのメッセージ

神戸大学大学院人文学研究科は 1949 年に文理学部として創設され、2019年には創立70周年を迎えています。この間、社会の情勢は大きく変化し、研究科の構成もその時々で変化してきました。今では、哲学、文学、歴史学、心理学、言語学、芸術学、社会学、美術史学、地理学など広い学問領域をカバーする 15 の専修によって構成されています。

研究科の構成が変わっても、人類の叡智の蓄積としての古典と現代的問題を結びつけて考えるという人文学の営みそのものは不動です。アドミッションポリシーにもある通り、これからも人文学研究科は、古典を通して人文学を深く理解するとともに、社会的対話により人文知を実践していく能力を身につけ、現代社会において活躍できる人材を育成する「場」であり続けます。

こうした「場」を実現・維持するために、人文学研究科は「徹底した少人数教育」、「15 専修による幅広い人文知の伝授」、「異なる文化との対話に必要な外国語によるコミュニケーション能力の育成」に努めてきました。私たちはこうした取り組みによって、個々の学生の好奇心にきめ細かく応え、自ら問題を設定し、解決するスキルを学生に伝授することを目指しています。

いま私たちが生きている社会は、インターネットや AI などの技術の急速な進展、また不定期に突然襲ってくる疫病によって不可逆的に変動しています。こうした時代においてこそ、これまでの人類の叡智の結晶である古典に一旦立ち返ることが求められます。これまで人類はこのような変動にどう対応してきたのか、いまの変動はこれまでのものとは本質的に異なるものなのか、そうしたことを知の根源から考える基盤を古典は与えてくれます。また、こうした学的態度が「場」の中に自然な形で埋め込まれていることが人文学研究科の大きな強みでもあります。

他方、人文学研究科は社会的対話により人文知を実践していく「場」も多く提供しています。その一つが、本年度新たに設置される「人文学推進インスティチュート」です。このインスティチュートは、これまで人文学研究科に設置されていた4つの教育研究事業(「地域連携センター」、「海港都市研究センター」、「倫理創成プロジェクト」、「日本語日本文化教育プログラム」)の横のつながりを促すものです。この新たな「場」において、現代の新しい人文学的課題に果敢に取り組んでゆく新たなプロジェクトの育成を進めていきます。また、研究を展開し、学生を育成するために、兵庫県および県内の自治体、東アジアや欧米の諸大学などと緊密な連携を推進しています。

人文学研究科では異なる文化との対話の機会も多く提供しています。2012年に始まった「神戸オックスフォード日本学プログラム」では、オックスフォード大学東洋学部日本語専攻の2年生全員(約12名)が1年間文学部で日本語・日本文化を学習します。このプログラムにより、オックスフォードの学生と日本の学生が話をしている姿を、キャンパス内でよく見かけるようになり、学生にも大きな影響を与えています。また、夏に行われるオックスフォード大学での英語・イギリス文化研修に学生が参加するようになり、海外体験への関心が高まっています。

このように人文学研究科は、人類の叡智の蓄積としての古典と現代的問題を結びつけて考えるという人文学的営為を継承・発展させるべく努めています。「人文学諸分野に関心を持ち、既成の価値観にとらわれることなく、自分で問題を発見し、追究していく情熱を持っている人」、「研究者としての自覚をそなえ、自らの学術研究を学際的かつ国際的な幅広い視野のなかで展開していく意欲を持っている人(「人文学研究科アドミッションポリシー」から)が人文学研究科に進学してくださることを、私たちは心から期待しています。

人文学研究科長
長坂 一郎

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