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大学発アーバンイノベーション神戸報告会「感染症と災禍をめぐる経験と記憶」

2022年3月26日、神戸大学人文学研究科社会学教室を主催、神戸大学海港都市研究センターを共催として、研究報告会「感染症と災禍をめぐる経験と記憶」が、神戸大学人文学研究科の会場と日本各地や中国、イギリスをつなぐハイブリッド形式にて開催されました。神戸市の研究助成事業「大学発アーバンイノベーション神戸」のプロジェクト「『病』と『厄災』をめぐる比較都市史的研究:感染症対策と公衆衛生言説を中心に」の成果報告会として開催された本催しは、現代や歴史上の感染症及び神戸港をめぐる記憶を2つの柱として、3部構成で実施されました。

第1部「感染症という経験」では、佐々木祐准教授(人文学研究科・社会学)と、「社会調査演習」受講生のうち三名(野中康生氏、崎山航志氏、沖本暁子氏)が、新型コロナウィルス流行下の兵庫県内の小中高生および神戸大学学生に関する調査に基づく分析と、『神戸又新日報』をはじめとする明治・大正期の新聞に掲載された流行性感冒やコレラなどの感染症に関する記事の分析及び現代のコロナ禍における報道・情報流通との比較などを行いました。

第2部「港湾と労働の記憶」では、原口剛准教授(人文学研究科・地理学)、小谷真千代氏(大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員)が、神戸市の港湾開発を通じた労働者を取り巻く景観や社会関係の変化や、アスベスト被害などを含む「港湾病」の労働災害認定をめぐる労働者の運動に注目して、神戸港における労働の歴史を検討しました。

第3部「厄災と社会変容」では、社会学研究室出身研究者4名が感染症にまつわる報告を行いました。前半では、川口ひとみ氏(神戸大学人文学研究科研究員)、藤岡達磨氏(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)が、神戸をはじめとする日本華僑社会への感染症の影響に関する歴史と現在を、公衆衛生や埋葬文化に注目して分析しました。後半では、中国から参加した連興檳氏(深圳大学外国語学院准教授)が中国での新型コロナウィルスに対する取り組みを、深圳市を事例として紹介しました。また、イギリスから参加した金貞蘭氏 (オックスフォード大学歴史学部科学・医学・技術史センター助教)は、近代東アジアにおける帝国主義的拡大とコレラなどの感染症の流行との関係や、こうした因果関係に無自覚なまま帝国主義期日本で展開された朝鮮半島出身者と感染症を結び付ける言説についての検討を行いました。

報告終了後には、フロアやオンライン参加者から、メディア論や労働運動などの観点からコメントや質問が行われ、議論が深められました。

当日のプログラム及び資料はこちらから確認できます。

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