2004年度の取り組み
新潟県中越地震被災地巡検報告とシンポジウム「新潟県中越地震からの文化遺産の救出と現状」への参加記 |
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松下正和(文学部助手) |
1.中越被災地の巡検 |
2005年2月11日、新潟県中越地震による被災の中心部である小千谷市・長岡市・川口町を巡検した。これら被災地の旧家のうち、新潟史料ネットにより調査が行われた箇所を中心に蔵の外観を調査した。 その結果、地震の揺れにより壁が剥落した蔵や、雪の重みに耐えきれず倒壊寸前の蔵を多く目にすることとなった。特に無住の寺社や避難所暮らしによる留守の家屋では、雪かきができず、雪が数m積もったままとなっているケースもあった。大きな揺れによって耐久性が無くなっている上に、さらに雪の重みがのしかかるという二重の被害を受けて、被災地の建築物への影響はかなり大きいことがわかった。このように、新潟県中越地震の特徴は、豪雪地帯での被災という点である。この雪が復興を遅らせ、レスキューの妨げとなっていることが改めて実感できた。 |
2.シンポジウム「新潟県中越地震からの文化遺産の救出と現状」に参加して |
翌12日は、地域連携センターの奥村弘・市澤哲両氏とともに先日まわりきれなかった小千谷市内を午前中に巡検した後、午後からは新潟大学人法経棟大会議室(F棟5階)で行われた、シンポジウム「新潟県中越地震からの文化遺産の救出と現状」(主催=新潟大学人文学部地域文化連携センター)に出席した。 平川新氏(東北大学教授)の基調報告「宮城県北部連続地震と歴史資料の救済」の後は、新潟での具体的な取組の事例が報告された。報告は、以下の7本である。 |
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被災直後から新潟ネットをはじめとして様々な動きがあったこと、特に新潟ネットによる小千谷市内でのレスキュー以外についての情報(十日町情報館と長岡市立中央図書館文書資料室での取組など)を得たこともあり、非常に有意義な会であった。 討論時間が少なかったので残念であったが、神戸大からは奥村弘氏が代表して発言を行った。(1)自らも委員であった、内閣府の「災害から文化遺産と地域をまもる検討委員会」での答申において、対象とする「文化遺産」中に、未指定文化財でも地域の核となっているものや個人が所有している歴史的な資料についても含めるとすることを明確に打ち出した。こういう発想を各自治体レベルでも積極的に適用して欲しい、(2)阪神淡路大震災のときのように、災害は人々の記憶からすぐに忘れられていく。活動時の具体的な問題点を明確にし、全国に情報を発信することが大切、(3)地域密着な活動と県を越えていくような広域連携が必要ではないか、などの意見を述べた。 今後は、歴史資料ネットワークなどを通じて、新潟ネットによる被災史料救出活動に対する側面的支援を行うことができればと考えている。 |
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文部科学省現代的教育ニーズ取組支援プログラム事業「地域歴史遺産の活用をはかる地域リーダー養成」事業企画 |
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上の事業を推進させるため、昨年12月に次の2つの企画を催したことをお知らせします。 【1】研究会(テーマ「歴史史料の保管と廃棄」) 新潟大学人文学部の矢田俊文氏(日本中世史・中世地震研究)をお招きして「歴史史料の保管と廃棄 ―震災・市町村合併を中心に―」と題する報告を頂きました。 【2】地域歴史遺産の活用をめぐるシンポジウム 内田俊秀氏(京都造形芸術大学芸術学部教授)が、パリとローマといった海外や金刀比羅宮を例とした国内での歴史遺産の活用について、沢田伸氏(兵庫県建築士会ヘリテージ特別委員)が兵庫県教育委員会のすすめる「ヘリテージマネージャー」人材養成とその展開について基調報告を行いました。同時に県内各地のヘリテージマネージャーからその地域の話題や問題等の報告も頂いた。その後鈴木正幸教授(神戸大学理事 副学長 地域連携担当)と足立裕司教授(工学部)をコーディネーターとして |