特別研究「地域歴史遺産保全活用教育研究を基軸とした地域歴史文化育成支援拠点の整備」

国公立大学フォーラム

 人文学研究科では、平成22年度〜24年度の3年間、文部科学省より特別経費の交付を受け、特別研究プロジェクト事業「地域歴史遺産保全活用教育研究を基軸とした地域歴史文化育成支援拠点の整備」を開始させました。
 その主たる目的は以下の2点です。

  1. 人文学研究科地域連携センターを軸にして「地域歴史文化連携コンソーシアム」を設置し、地方自治体と個別に行ってきた地域連携事業を相互調整し、全国のモデルとなる地域歴史遺産の保全活用の実践的研究を深化させる。
  2. 地域連携事業の場を学生の教育フィールドとして利用するとともに、地域歴史文化を次世代へ継承するため、社会人も含めた体系的な人材教育をおこなう。

 この二つの目的の達成に向けて、現在、3名の特命の専任教員(准教授1名、助教2名)を任命し、事業の具体化をおこなっています。 2010年6月、神戸大学が地域連携事業を展開しているいくつかの自治体、市民団体、学内団体等とともに、「地域歴史文化連携コンソーシアム」を立ち上げ、上記の1と2の目的と課題を具体化させるための報告、および問題提起をおこないました(22機関44名参加。学外からは19機関22名)。その結果、このコンソーシアムを通じて、(1)全県的な史料群データベースの作成と利用環境の整備、(2)文化財や地域遺産を活用したまちづくりに携わる人材の育成、の二つの事業をすすめていくことが決まりました。
 さらに、2010年8月、神戸大学と兵庫県との間で「包括連携協定」が結ばれました。これを受け、今後、地域連携センターと兵庫県教育委員会文化財室との間で、「覚書」を交わし、県内各自治体とも協力して、全県的な史料群データベース作りと、人材育成事業を全県的な規模ですすめていくことを目指しています。


地域歴史文化連携コンソーシアム

第1回 地域歴史文化連携コンソーシアム

2010年6月28日(月) 15:30〜
於:神戸大学文学部A棟・学生ホール

《参加機関》
朝来市教育委員会、尼崎市立地域研究史料館、伊丹市立博物館、小野市立好古館、加西市教育委員会、香寺町史研究室、神戸市立中央図書館、神戸市立博物館、神戸市立文書館、神戸市立埋蔵文化財センター、神戸新聞社、三田市(市史編さん担当)、佐用町教育委員会、たつの市教育委員会、丹波市春日町棚原自治会パワーアップ事業推進委員会、兵庫県教育委員会文化財室、兵庫県立考古博物館、福崎町教育委員会、神戸大学経済経営研究所・同大学院人文学研究科地域・同文化学研究科・同地域連携推進室

詳細はこちらをご覧ください。


ひょうご歴史資料情報基盤システム(仮称)

 地域史料の存在は、歴史文化を基軸とした地域再生の活動を保障する基礎的条件です。しかし、近年の災害や盗難などにより、多くの地域史料が散逸、流失するという事態が見受けられます。また、県内各地の自治体史の編纂活動等を通じて、地域史料の基礎的データが蓄積されてきているにもかかわらず、これらの情報が市民の活動のために有効活用されていない場合もあります。
 地域連携コンソーシアムでは、地域史料をとりまくこれらの現状をふまえ、行政・市民・大学が協同して、各地の地域史料群情報の基盤を整備し、市民による地域史料の活用の促進に向けた、全県規模での活動が必要不可欠であると考えます。
 よって、具体的には、以下の活動を進めていきます。
目標I 悉皆的調査にもとづいた全県的な地域史料群目録の作成
目標II 県内の史料情報を行政や市民が有効に利用できる環境の整備

史料群目録データベース作りをめざして

兵庫県などと協力し、県内各自治体ごとの資料調査をすすめます。

広域史料デジタルデータ

「神戸又新日報」など広域的な記録史料のデジタルデータ化をめざし、市民が活用しやすい環境を整えます。

歴史を活かしたまちづくりハンドブックの作成

地域史料を活用した活動例の紹介などをおこない、データベースの活用を促進します。


地域歴史文化を担う人材育成

 これまでの地域連携センターの事業成果にもとづき、地域歴史文化を担う人材の育成を進めます。育成を図る人材像は、(1)地域歴史遺産の保全・活用についての高度な能力を有する専門家、(2)地域の歴史に関心を持ち、地域歴史遺産を活用できる市民という、二つの人材像があります。地域歴史遺産の保全には、幅広い市民的関心が必要となると同時に、そうした関心を受け止めるための専門能力を有した人材も必要です。今後、市民講座の開講などを通して、こうした人材の育成を目指します。

まちづくり地域歴史遺産活用講座

「まちづくり地域歴史遺産活用講座」は、前記の人材像のうち(2)の育成を図るものです。したがって本講座が対象とするのは、おもに一般の市民、学校の教員、歴史系の専門職ではない自治体職員の方などです。
 本講座により、地域歴史遺産についての基礎的な知識を学ぶことで、地域の歴史文化への関心を喚起するとともに、さらにその中から積極的にまちづくりに取り組む地域リーダーが出現することも期待されます。また、昨今、歴史系の専門職ではない自治体職員が、資料館や文化財を扱う業務にたずさわる可能性が増えています。こうした方々のサポートにもなればと考えています。
 本講座は年2回開講で、兵庫県下の各県民局(神戸・阪神南・阪神北・東播磨・北播磨・中播磨・西播磨・但馬・丹波・淡路)を単位として、各地で順次開講する予定です。
 現在、試行プログラムを実施し、本格実施に向けた準備を進めています。

 試行プログラムについてはこちらをご覧ください。


歴史文化ファンドの確立

 地域歴史遺産の保全・活用や、その担い手となる人材育成の取り組みは、持続性・継続性が要求されます。取り組みを持続可能としていくための財源確保のために、歴史文化ファンドの確立を模索していきます。