尼崎市富松における連携事業

まちづくりシンポジウム

テーマ
歴史とまちづくり 富松城跡からの発信 ―地域歴史遺産の保存と協働のまちづくりについて考える―
基調講演
市澤哲「歴史遺産と地域社会の関わりについて  地域歴史遺産を活用したまちづくり―富松地区の活動から学んだこと―」
日時
2006年2月9日(金)14:00〜16:30
会場
尼崎市立尼崎高校北館・特別講義室
主催
尼崎市(主管:立花支所地域振興課)
共催
富松城跡を活かすまちづくり委員会
後援
神戸大学文学部地域連携センター、尼崎市教育委員会、尼崎市社会福祉協議会立花支部
参加者
200名以上(入場無料)

 尼崎市立花地区にある富松地域では、中世城郭の原型をとどめる富松城跡の保存・活用をめざす積極的な住民活動がすすめられている。神戸大学文学部地域連携センターも、早くからこの支援活動をおこなってきた。このような取り組みに対し、尼崎市当局(立花支所)においても、「協働」の観点からこれを支援・協力する姿勢が示され、あわせて富松を発信基地とする地域歴史遺産を活用したまちづくりのあり方一般を考える催しがもたれることになった。今回がその1回目の企画である。富松の活動に当初から関わった地域連携センター担当教官の市澤哲氏が講師と呼ばれ、基調講演をおこなうとともに、その後の座談会のコーディネーターとして参加した。
 講演でまず市澤氏は、文学部地域連携センターの活動概略を紹介し、その上で、自らが富松の活動から学び取った点として、(1)従来の指定文化財や世界遺産という捉え方とも異なる、「地域歴史遺産」(=地域の人々にとってかけがえのない歴史の遺産)という見方を得るきっかけを与えられたこと、(2)地域住民・自治体・大学の三者がそれぞれどのような(潜在的)能力をもち、相互に今何を必要としていることが分かるようになったこと、(3)地域遺産の展示・活用やその情報の外部発信活動が、歴史遺産の次代への継承につながるとともに、地域コミュニティーの再生や活性化にもつながるという事実がみえてきたこと、などの点をあげた。そして最後に、近年よく耳にする「官から民へ」という議論に疑問を投げかけ、富松をはじめとする住民活動は、いわば「新しい公共性の創造」につながる活動と評価でき、官(行政)は経済性のみを重視するばかりでなく、そうした公共性を生み出す「民」の活動を積極的にサポートしていくことこそが重要だと締めくくった。
 市澤氏の基調報告の後、富松城跡を活かすまちづくり委員会代表の善見壽男氏による「富松城跡の保存・活用に向けた地域住民の取り組みについて」という報告と、尼崎市教育委員会学芸員の楞野一裕氏による「立花地区と富松城の歴史について」という報告がおこなわれた。その後、市澤・善見・楞野の3氏に加え、尼崎市役所立花支所長の高田忍氏を入れた4氏による座談会、およびフロアーからの質問を踏まえた討論もおこなわれた。議論は企画の趣旨に合致した、地域遺産の保存・活用をすすめるために住民や行政や大学が何をしたら良いかの点をめぐって熱心におこなわれ、予定時間を約30分上回る午後4時30分に終了した。
 参加者は会場定員数を大幅に超える200人以上、300 人近くにのぼった。

(文責:坂江渉)

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