小野市との連携事業

小野市立好古館特別展「青野原俘虜収容所の世界」

 2005年10月1日、小野市立好古館で特別展「青野原俘虜収容所の世界〜河合地区の近世・近代から現代〜」の開会式が開催されました。この特別展は、本年1月26日に小野市と神戸大学が締結した社会文化にかかわる連携事業をすすめるための協定にもとづいて行われた、小野市と神戸大学による共同企画です。第一次世界大戦時、小野市と加西市にまたがる青野ヶ原に「青野原俘虜収容所」が開設されました。青野ヶ原俘虜収容所については、以前から10年以上にわたって『小野市史』の編纂などを通じて、神戸大学文学部の奥村弘(日本史)や同大津留厚(西洋史)らと共同研究をおこなってきました。今回の特別展は、それらの成果を踏まえて俘虜たちの生活や地域との交流の様子を紹介するものです。あわせて青野原俘虜収容所に隣接する河合地区北部の小・中学生が調べた河合地区の歴史調べを展示しています。
 開会式には、小野市から蓬莱務市長、陰山茂教育長らが、神戸大学から鈴木正幸神戸大学副学長、北村新三神戸大学副学長、奥村弘神戸大学文学部地域連携センター事業責任者らが、また、大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館ナネット・ハーニッシュ事務官や、地元から藤井隆雄河合地区地域づくり協議会会長らおよそ60名が出席しました。
 開会式では、蓬莱市長が「地域にねむる文化遺産の保護・活用について、行政・大学・地域の連携によりひとつの大きな成果をあげることができた」とあいさつし、鈴木理事は「地域と大学の連携がいっそう深まることを期待する」と応えました。ハーニッシュ事務官はカール・ヴォカレックドイツ総領事の挨拶を代読し、「特別展を契機として両国の理解が深まり文化的な交流が一層深まることに期待をよせています」と述べました。式典は、市長らと地域展を作成した河合北部6町の児童代表6人がテープカットで幕を閉じました。

 式典終了後、参加者は奥村神戸大学文学部助教授の案内・解説で、俘虜らが使用したビリヤード台や、俘虜製作品(刺繍・バスタブ・油絵・煙草道具・絵はがきなど)や当時を伝える写真・史料などを展示した特別展を観覧しました。

 関連事業として、10月10日(月・祝)には小野市うるおい交流館エクラ(同市中島町)で、「ふるさとをしのぶ音楽会〜青野原俘虜収容所音楽会の復元〜」が開催されます。11月5日(土)には、調査に協力した岸本肇神戸大学発達科学部教授らを招いた記念シンポジウムが小野高校百年記念館で開かれました。

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小野好古館特別展関連企画「ふるさとをしのぶ音楽会」

 小野市立好古館特別展「青野原俘虜収容所の世界」の関連企画として、2005年10月10日、兵庫県小野市うるおい交流館エクラにて「ふるさとをしのぶ音楽会」が開催されました。これは、第一次世界大戦時に小野市と加西市にまたがる青野ヶ原に設置された青野原俘虜収容所内で行われた慈善音楽会の模様を、86年の歳月を経て、神戸大学交響楽団(指揮=田村文生神戸大学発達科学部助教授)の手によって復元したものです。音楽会の企画・運営は、今年1月26日に小野市と神戸大学が締結した、社会文化にかかわる連携事業をすすめるための協定にもとづいて、小野市立好古館と神戸大学文学部地域連携センターが共同で行いました。
 演奏会は、陰山茂小野市教育長と、眞山滋志本学理事・副学長による主催者あいさつと、それにつづくアルノルト・オーバーマイヤー氏(オーストラリア大使館文化担当官)が友好あいさつではじまりました。
 つぎに、大津留厚神戸大学文学部教授が音楽会の主旨について説明しました。また、1919年3月30日に青野原俘虜収容所内で行われた慈善演奏会のチラシをもとに、青島の巡洋艦エリザベート号に乗船していたオーストリア=ハンガリー兵約500名がいかなる運命をたどり青野原俘虜収容所に収容されることとなったのかなどについて講演しました。
 演奏には、曲毎に長野順子神戸大学文学教授の解説がありました。曲目は、歌劇「レーヨン」序曲(A.トマ)、レヴリ(H.ヴェーダン)、ソルヴェイグの歌(劇音楽「ペールギュント」より)(E.H.グリーグ)、歌劇「ノルマ」序曲(V.ベッリーニ)、巡礼の合唱(歌劇「タンホイザー」より)(R.ワーグナー)、軍隊行進曲第一番(F.シューベルト)です。
 これらは主に19世紀半ばのヨーロッパで活躍した作曲家たちで、最近ではあまり聞かれない名前も含まれています。大半がオーケストラ曲や伴奏つきのソロ作品ですが、おそらく軍楽隊の形で演奏されただろうことから、それぞれの小編成の吹奏楽向けに、田村助教授と発達科学部の学生が編曲を試みました(音楽会パンフレットより)。
 来場者は約300名で、市内はもちろん、県外からの参加も多く、「すばらしい演奏だった」、「大変有意義な演奏会だった」、「歴史との関わりも触れられて勉強になった」、「小野市と俘虜との関係についてもっと知りたい」などと語り、大変好評でした。

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講演会「青野原俘虜収容所の世界」

 2005年11月5日(土)、講演会「青野原俘虜収容所の世界」が小野高校百年記念館(兵庫県小野市)で開かれました。これは、10月1日(土)から11月27日(日)まで2ヶ月にわたって開催されていた小野市立好古館特別展「青野原俘虜収容所の世界」に関連して、神戸大学文学部地域連携センターと小野市立好古館が共同で企画し、開催したものです。
 神戸大学文学部は、『小野市史』の編纂事業などを通じて10年以上にわたって青野原俘虜収容所についての研究を行ってきました。今回は、その長年の研究成果を市民の方々に初めて報告する機会となりました。報告者には、青野原俘虜収容所の研究に長年たずさわってきた岸本肇神戸大学発達科学部教授(スポーツ史)、福島幸宏京都府立総合資料館職員(日本近代史)に加え、青野原に移送された俘虜たちが最初に収容されていた姫路の俘虜収容所について研究を進めてこられた藤原龍雄夢前中学校長(元姫路市史編纂委員)をお招きし、青野原俘虜収容所研究の現在までの成果についてスライドをまじえながらお話しいただきました。また、当時の俘虜の日記を翻訳するなど(『小野市史』史料編IIIに収録)、青野原俘虜収容所のオーストリア=ハンガリー兵について多くの研究実績を有する大津留厚神戸大学文学部教授(西洋史)に今回の講演会のコーディネーターをお願いしました。
 講演に先立ち、大津留氏より今回の講演会の開催の経緯や趣旨について説明がありました。つづいて、藤原氏による「第一次世界大戦と姫路捕虜収容所〜捕虜の生活とその遺物〜」、岸本氏による「青野原俘虜収容所捕虜兵のスポーツ活動」、福島氏による「俘虜を取るということ〜第一次大戦期の俘虜政策と青野原収容所」と題する講演が行われました。
 講演後の質疑応答は、大津留氏を司会として進められました。そこでは、徳島の俘虜収容所などに比較して青野原俘虜収容所の研究が遅れているのはなぜか、今後どのように研究が進む可能性があるのかなどの多く質問やご意見をいただきました。
 参加者は100名を越え、「大学と連携しているだけあってハイレベルながらも分かりやすい企画であった」(30代男性)、「近くの青野ヶ原に俘虜収容所があったことを初めてしった。今後とも調査・研究成果を期待している」(70代男性)、「第一次世界対戦時の俘虜生活者についてのイメージを新たにした」(60代男性)などと語り、大変好評でした。
 また、講演会終了後、岸本氏が紹介したスライドのうち場所の特定できない写真について、地元の方から場所をご教示いただいたり、青野原俘虜収容所について親族から聞いた話を教えていただくなど、この講演会を契機として、青野原俘虜収容所についての研究がより一層発展することが期待されそうです。

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