神戸を中心とする文献資料所在確認調査

神戸大学の所蔵文書調査

文学部古文書室保管の文献資料

神戸市を中心とする文献資料所在確認調査の一環として2004年3月より本学が所蔵する文献資料の所在確認調査を開始しました。調査の対象としては、まずいくつかの分館からなる附属図書館と文学部古文書室で管理するものとが挙げられます。

附属図書館所蔵の文献資料調査

社会科学系図書館

 神戸大学附属図書館の中で、事実上神大付属図書館中の本館的な位置にある社会科学図書館には、館としての長い歴史のなかで収集されてきた実に多くの文献史料(古文書)が所蔵されています。
 社会科学図書館蔵の古文書を分類すると、概ね四種に分類できます。
 第一には特定の村名、個人家名等が冠された文書群です。以下、主な文書群名を挙げれば、住田文庫(旧神戸村関係文書)、村上文書(旧摂津国八部郡花隈村)、伊賀村文書(旧河内国丹南郡)、久宝寺屋文書(旧蔵地未詳、大坂か)、沓水家文書(旧近江国長浜町)、西郷村文書(旧河内国若江郡)、風間文書(旧山城国葛野郡下桂村)、田中勘左衛門文書(旧河内国茨田郡点野村)、石川八兵衛文書(旧播磨国揖東郡船渡村)、福井家文書(旧摂津国豊嶋郡池田村)、湯浅家文書(旧蔵地未詳、京都か)、栄村庄屋文書(旧播磨国揖西郡)、飾東郡印南郡文書(旧播磨国)といった具合です。兵庫県下のものが多いですが、ほかにも大阪府や京都府、滋賀県の文書もみられます。
 これらは文書群ごとに分類整理がなされ文書番号なども付与されています。但し、こんにち文書整理でふつうに行われる一点毎の目録番号付与が必ずしもされておらず、中にはおそらく内容の類似性(たとえば「借用証文」で一括するなど)からでしょうが100点を超える一紙文書がたった一つの文書番号で処理され、目録上から文書の具体的な中身を知ることが不可能なものもあります。さらに、これらの多くはいわゆる図書カードによる目録しかなく、せっかくの目録が一覧できないという現状にあるのも残念なことです。
 第二には「古文書」として一括されている群小な文書群です。これらは地域や家名などに関わらず全て一括された上で内容に基づく分類が施されています。おそらくほんらい小点数のものを古書店などからさみだれ式に購入するなどして収集されたものと考えられます。したがって、点数はやや少なくなりますが、出所の地域・家毎の区分け(群の復元)もかなりの程度可能と思われます。旧村単位で、これまでに確認されているものを掲げると、安黒村(旧播磨国宍粟郡)、酒井村(旧播磨国神東郡)、北野村(旧摂津国八部郡)、兵庫津(同)、篠原村(旧摂津国兎原郡)、石屋村(同)、大石村(同)、河原村(同)、高畑村(旧摂津国川辺郡)、下嵯峨村(旧山城国葛野郡)などがあり、家単位では、鍋屋文書(旧淡路国津名郡洲本城下)、笛木氏文書(旧蔵地未詳)などがあります。
 第三に、全く整理の手が入っていないものもしくは、整理途上にあると思われる古文書が保管されています。整理途上のものは、あるいは整理のうえ、第二の「古文書」に繰り入れられていくものと考えられます(鍋屋文書など)。全く整理の手が入ってないと思われるものに、旧篠原村の若林(嘉茂治)家文書がありました。これは小ぶりの木箱に収められていますが、一紙ものが多い模様で点数もかなりの数に上るとみられます。これらは今後地域連携センターの手で整理を行なってゆきたいと考えています。
 第四としてあげられるものは、以上の古文書類とは別に、一般書と同じ書架に架蔵されているものです。これらのほとんどは和綴じ竪帳のもので、その形態から一般の図書として分類されてしまったものと考えられますが、墨書きの一次史料であるにもかかわらず保管状態は良好とはいえず、かなり問題があります。書架よりの取り出しなどを繰り返していくうちに生じたと思われる破損も見られ、早急なケアが必要です。この分類のもののうちには大変貴重な史料も見られますので、貴重書として上記の文書群とともに貴重書庫への配架変更を図書館側に求めてゆきたいと考えております。

総合・国際文化学図書館

 附属図書館への調査開始以来もっとも重点的に調査を行ってきたのが、総合・国際文化図書館所蔵の所蔵文献資料です。なかでも「郷土資料」として分類される一群の文献群は大部分が、国際文化学部の前身である姫路高等学校(旧制)および神戸大学姫路分校時代に収集された文書や書籍からなる文献群であることがわかっています。これらは現在、総合・国際文化学図書館の書庫内に置かれた保管庫内に収蔵されています。
 実はこの文献群には、約30年以上前の作成にかかるとみられる目録(以下「郷土資料目録」)が存在していますが、今回所在確認を行ったところ、「郷土資料目録」に掲載されているもので、現在の保管庫で一括されている纏まりの中に含まれていないものがあることが確認されました。それらのゆくえについては今後の調査にまつほかありませんが、一部確認できたところでは、自治体史のような書籍の一部のものが一般書架に転架されたらしいことがわかっています。いずれにしても、今回の確認の結果、「郷土資料目録」が現在の「郷土資料」の纏まりの目録としては、ほぼ使いえなくなっていることが確認できました。
 そこでこれまでに行ってきた作業としては、「郷土資料目録」をベースに資料の所在確認も兼ねて、データの詳細化をおこない、現在の「郷土資料」の纏まりの仮の目録として機能させるべく、新たな目録作成を行いました。なお、この整理に当たっては、いわゆる書籍と文書史料との分類も同時におこない、その結果229点からなる文書(一次史料)を抽出しました。これらの文書史料については、現時点では他の書籍などと同じ保管庫に収蔵したままの状態ですが、将来的には別置をして、より良い保管環境のもとに保管されることが望ましいと考えています。
 ちなみにこの文書群には、慶長4年(1599)の木下勝忠判物や同6年(1601)の池田照(輝)政の判物や、姫路の町に関わる史料など、播磨を中心としたかなり貴重な史料が含まれています。これらの中にはすでに歴史学界に紹介されているものや、歴史研究に使用されているものもありますが、まだ広く知られていないものも多く存在し、今後の研究が期待されます。

人文科学図書館

 人文科学図書館には、あまり多くの文書史料(一次史料)は所蔵されていませんが、播磨国印南郡小野村(現小野市)や兵庫県第十三大区栄村(現龍野市)の明治初期の史料群等が収蔵されており、また一般書架に2点の一次史料が確認されました。前者は目録などもまだ作成されていない模様ですが、保管場所の問題も含め今後十分なケアが求められます。

人間科学図書館

 現在発達科学部内に設置されている人間科学図書館は、もと同学部が教育学部と称したことが示すように、教育関係の文献を多く所蔵しています。その内、今はもう存在していないのですが、旧・教育学部郷土研究資料室が所蔵していた文献群が、同図書館の書庫に所蔵されており、地域連携センターではこの郷土研究資料室旧蔵資料のうちの文書史料を対象に調査を行ないました(現在継続中)。1973年に発行された『郷土研究資料目録』(第一輯)を見ると、同学部がもと御影師範学校、姫路師範学校、明石女子師範学校が母体となって今に至っている関係で、それらの各師範学校時代に収集されたと思しきものや、それらが統合されて成立した兵庫師範学校時代に収集されたものなども見受けられました。旧・郷土研究資料室所蔵資料は、大部分は刊行物によって占められていますが、中にはいわゆる古文書(一次史料)の範疇に含めるべきものもあります。明石女子師範時代に収集されたと思われる旧明石藩の藩政史料が若干みられる(宝暦11年11月〜12月の祐筆日記など)ように、数は少ないながらも貴重な史料を含んでいます。また刊行物でも、戦前に発行された兵庫県内の地誌類には貴重なものも見られます。また教育学系の学部としての性格から戦前の教科書も体系的に収集されており目をみはるものがあります。
 今後はさらに調査を進め、大量の所蔵文献のなかからとくに貴重な一次史料を析出するなど、調査を継続してゆきたいと考えています。

自然科学系図書館ほか

 またや自然科学系図書館や海事科学分館などにも一次史料が収蔵されているとの情報もありますが現時点では未調査です。

▲このページのトップへ ▲文献資料所在確認調査のトップに戻る

文学部古文書室保管の文献資料

 文学部には古文書室が設置されていますが、その名の通りここには少なからぬ文献資料が収蔵されています。
 なかでも代表的なのが、戦国期の茨木城主で近世には豊後国岡藩主だった中川家文書です。本文書群につきましてはすでに全点にわたる史料紹介が公刊され(神戸大学文学部日本史研究室編『中川家文書』臨川書店、1987年)、広く学界に知られるところとなっています。またデジタル化も完了しており、付属図書館のHP内デジタルアーカイブより閲覧も可能です
 このほか古文書室には、摂津国兎原郡御影村文書や同じく鍛冶屋村文書、畑原村文書、中野村(旧芝切家)文書、武庫郡常吉村文書、名塩村文書、川辺郡山本村文書などが収蔵されていますが、整理途上のものや未整理のものもなお多い状況です。また歴史資料ネットワークが阪神・淡路大震災後の活動でレスキューした山本家所蔵文書や藤本家文書、脇浜村文書なども現在古文書室に仮に架蔵されており鋭意整理が進められています。
 なお地域連携センターによって借用・収集された文書も、文学部古文書室に保管されています。

(文責:木村修二)

▲このページのトップへ ▲文献資料所在確認調査のトップに戻る