古典ゼミナール
「古典と美術史研究会」2009年度開催記録

 

 

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第1回

  • 開催月日:2009年4月30日(木)
  • 場所:561教室
  • 参加人数:10名
  • 報告者:宇埜直子(美術史D3)

第1回レポート

 ジョルジョ・ヴァザーリ(1511-74)のLe vite de' piu eccelenti pittori, scultori e architettori (1550/1568, 『画家・彫刻家・建築家列伝』)のドメニコ・ベッカフーミ(シエナ1481/86-1551)の項を、パオラ・バロッキ注釈版(Firenze, 1966-)を中心にガエタノ・ミラネージ注釈版(Firenze, 1906)、デ・アゴスティーノ版(Novara, 1967-)と比較しながら読み解く。第一回はベッカフーミの生涯と代表作を概観し、さらに東西問わず著名な画家たちに共通して残る幼少時代の記述、砂地の上の落書きを高貴な人に発見され修行時代が始まるといういわゆる天才発見伝説について議論した(pp. 383-384)。(文責:宇埜直子)

 


 

第2回

  • 開催月日:2009年5月14日
  • 場所:561教室
  • 参加人数:10名
  • 報告者:鹿子島亜希(美術史M1)

第2回レポート

 前回に引き続きヴァザーリLe Viteのドメニコ・ベッカフーミを読む。報告者がイタリア語版ではなく英語訳を参照してきたため、さまざまある英訳の比較検討を行った。意訳されている場合が多く解読の助けになることもあれば誤訳されている場合もあった。また、16世紀のイタリア美術が報告者の専門でないこともあり、専門用語の確認なども行った。同郷の画家ソドマ(ジョヴァンニ・アントニオ・ヴェルツェッリ)との作品比較はベッカフーミの初期の様式形成に与えた影響を明らかにした。(文責:宇埜直子)

 


 

第3回

  • 開催月日:2009年6月4日
  • 場所:561教室
  • 参加人数:10名
  • 報告者:大西晶子(美術史M1)

第3回レポート

 前回に引き続きヴァザーリLe Viteのドメニコ・ベッカフーミを読む。M1の参加者も英語訳を基にイタリア語を読み、注釈を参照するという作業にだいぶ慣れてきたようであった。今回はベッカフーミの生涯においても一大事業であったシエナ、ドゥオーモの床面大理石装飾について、その作品と照らし合わせながらヴァザーリの作品記述を丹念に読み解くというものだった。また輪郭線とキアロスクーロ(明暗効果)のベッカフーミが採用した技法についての報告も興味深かった。(文責:宇埜直子)

 


 

第4回

  • 開催月日:2009年6月11日
  • 場所:561教室
  • 講演者:中島美咲(研究生)

第4回レポート

 前回に引き続きヴァザーリLe Viteのドメニコ・ベッカフーミを読む。シエナ、サン・フランチェスコ聖堂の《キリストの冥府下り》について詳細な報告がなされた。またこの作品は油彩で描かれたが、ベッカフーミがテンペラ技法にこだわっていたことに対して議論がされた。テンペラから油彩への転換は15世紀末を境目にするとされるが、混合技法も存在し、ベッカフーミの時代でもテンペラ技法を用いることがあったことがわかった。(文責:宇埜直子)

 


 

第5回

  • 開催月日:2009年6月25日
  • 場所:561教室
  • 参加人数:10名
  • 報告者:中島美咲(研究生)

第5回レポート

 前回に引き続きヴァザーリLe Viteのドメニコ・ベッカフーミを読む。今回で最後となる。ベッカフーミが晩年に没頭した版画作品について報告がなされた。総括としてdisegno, maniera, graziaといった美術史で重要な概念とその訳出についてまとめた。
 原典を精読するという本来の目的は達成されたとはいえないが、美術史の始まりとされるヴァザーリの日本語訳の出版されていない部分を読破したことは大いに意義のあることだったと思われる。(文責:宇埜直子)

 


 

第6回

  • 開催月日:2009年9月11日
  • 場所:561教室
  • 参加人数:10名
  • 報告者:大杉千尋(美術史M1)・大西晶子(美術史M1)

第6回レポート

ロザリンド・クラウス『オリジナリティと反復』(1994; The originality of the avant-garde and other modernist myths, 1985)内、「ピカソの名において」に関する発表であったが、ピカソの研究史を美術史の歴史とからめて紹介しながら、新たな作品の読み解きを示唆したもので、構造言語学などを援用しながらの実作品に即した解釈は、専門外の学生にも刺激的であった。ピカソのコラージュ作品を意味論ではなく形象/場の形象という構成要素に分解して読み解くという手法が提示されているが、議論を発展させることより、クラウスの論を慎重に追うことに集中した。(他、「この新たな芸術空間-空間の中のドローイング」について)。(文責:宇埜直子)

 


 

第7回

  • 開催月日:2009年11月19日
  • 場所:561教室
  • 参加人数:10名
  • 報告者:鹿子島亜希(美術史M1)・中島美咲(研究生)

第7回レポート

 ロザリンド・クラウス『オリジナリティと反復』「アヴァンギャルドのオリジナリティ」の章に関する発表であった。著書のタイトルでもあるオリジナリティの概念、オリジナリティと反復(コピー)の問題を扱ったもので、内容は比較的理解しやすいものだったが、発表者は著者の「グリッド」、「特異性」といった用語をわかりやすく咀嚼し紹介してくれた。また、オリジナリティの脱構築に関しても、発表者は該当する図版を準備し、写真を写した写真(コピーのコピー)といった作品を参照しながら進められたため晦渋な文章にもかかわらず議論が進んだ。(他、「ノー・モア・プレイ」について)。(文責:宇埜直子)