第11回 地域史を調べること学ぶこと―目的と支援を問い直す―
- 2013年2月2日(土)11:00〜17:00
- 神戸大学文学部B331号室(文学部B棟3F)
- 主催 神戸大学大学院人文学研究科、同地域連携センター
- 後援 兵庫県教育委員会・たつの市教育委員会・香美町教育委員会
郷土や地域の歴史を調べ学ぼうとする人びとの活動は、かつてから盛んでした。戦前はお国自慢的に郷土を誇ることが中心でしたが、戦後は必ずしもそうでない方向性をもった地域史研究団体などの活動が始まり、そこでは、身の回りの生活を見つめ直し、社会改善を志向する活動も全国的に広がりました。ある調査によると、現在でも全国には2000以上の郷土史・地域史研究団体があるといいます。ところが近年、どの団体でも会員の高齢化や減少により会報や通信の発行が不定期になり、あるいは休会、解散の危機に追い込まれるなどの困難に直面しています。これまでのこうした地域を調べ学ぼうとする人びとの営為を未来につなげることが重要な課題となっています。
一方、近年、新たなアプローチの仕方で地域の歴史文化に関わる動きもでています。たとえば、兵庫県では、自らの生活する地域固有の歴史文化を掘り起こし、それを若い世代へ継承する目的で大字誌を作成したり、小学生を対象とする社会教育に力を入れる動きが盛んになっています。また、新住民と旧住民の別にこだわることなく両者が一緒になって地域歴史文化を調べ直す開かれた活動(地域マップづくり、地域資料のミニ展示会)がみられます。さらに、襖の下張り文書剥がし活動などを通じ、地域の歴史文化に親しむなど、多様な接し方が現れて、その可能性が注目されます。
戦後盛んになった地域史研究団体の活動と近年の新たな動きは、時代状況や取り巻く環境、担い手も異なりますが、未来志向や身の回りの生活へのまなざしなどの点で共通するところがあり、それぞれの成果や課題をともに考える手がかりがあるように思います。
また、新しい動きを促し持続させていくにあたっては、行政や大学が大きな役割を果たしています。このように、人びとが自覚的なまちづくりの担い手となるためには、地域の歴史文化を自主的に調べ学ぶ人びとの営為を、行政や大学が支援することが重要です。
そこで、今年度の協議会のテーマは「地域史を調べること学ぶこと―目的と支援を問い直す―」としました。地域史をめぐる人びとの活動や、それを支える環境の構築などの諸課題を考えることを通じて、地域歴史文化の形成・継承のために、大学・自治体・市民が連携し、何をすべきなのか、何ができるのかを考えていきたいと思います。
本年度も協議会の間に時間をとり、各団体の方々が交流できるコーナーやポスターセッションの場を設けます。多くの方々に活動の成果物や書籍をお持ちよりいただき、展示・交流していただければ幸いです。ご参加をお待ちします。
プログラム
11:00 主催者挨拶 11:10〜11:20 趣旨説明(奥村弘・神戸大学地域連携推進室室長) 11:20〜11:50 報告(1) 大国正美氏(神戸史学会)「地域史研究の意義と課題―神戸史学会50年―」 11:50〜12:20 報告(2) 坂江渉氏(神戸大学大学院人文学研究科)「大学も関与する地域歴史文化継承事業の新しい動き」 12:20〜13:20 昼食・交流会 13:20〜14:20 報告(3) 大槻守氏(香寺歴史研究会)「大字誌作りを目指して」 報告(4) 久斗政光氏(三木市旧玉置家住宅保存会)「市民グループによる襖下張り資料の活用」 報告(5) 吉田ふみゑ氏(常民学舎)「文化サークル「常民学舎」と歴史民俗誌『Sala』の歩みとこれからの活動」 報告(6) 増田政利氏(網干地方史談会)「史談会と学校教育―網干地方史談会の取り組み―」 14:20〜14:50 交流会 14:50〜15:50 報告(7) 小栗栖健治氏(兵庫県立博物館)「ひょうご歴史文化フォーラムをめぐって」 報告(8) 海部伸雄氏(淡路市立青少年センター)「地域の歴史文化を生かした教育活動の展開―淡路市立育波小学校の実践―」 報告(9) 岸本道昭氏(たつの市教育委員会)「地域と学校と行政が連携した歴史文化遺産への学びと活用―たつの市堀家住宅での取り組み―」 報告(10) 石松崇氏(香美町教育委員会)「香美町の歴史文化を引き継ぐために―ふるさとマップ作り―」 15:50〜16:00 休憩 16:00〜17:00 総合討論 17:30〜19:00 懇親会 |
協議会の記録
この協議会の内容については、神戸大学学術成果リポジトリKernel掲載の報告書をご覧ください。