歴史文化をめぐる地域連携協議会

第10回 地域歴史文化の形成と災害資料―認識すること・記録すること・伝えることの意味を考える―

プログラム 報告書

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 2011年に発生した東日本大震災があらためて示したように、大規模な災害は、多くの人が、これまでの自分の人生を振り返ったり、みずからの住む地域について考え、また、自身の体験や地域の歴史文化を後世に伝えようとする意識も高めるきっかけとなります。
 こうした、地域を再認識し、また地域の歴史文化を次世代に残していこうとする活動は、何も大災害のときにのみおこなわれるわけではありません。近年、市民が自らの手で住んでいる地域の歴史を描き、また記録・継承し、あるいはそれをまちづくりに活かそうとする動きが各地で見られます。体験や地域の歴史について、書いたり、伝えようとすることは、それらがどういうものであるのかをあらためて認識し、考えるということでもあります。
 大規模な災害では、こうした動きが、より多くの人に、同時的に、あらわれるという特徴があります。したがって、災害資料をめぐる問題について考えることは、地域の歴史資料、あるいは地域歴史文化の形成について考えるにあたって、重要な手がかりとなります。
 1995年の阪神・淡路大震災でも、多くの人が手記を残し、また、地域の歴史や、自身のライフヒストリーを描く活動をおこない、こうした書くという行為を通して、自らの来し方や、地域について見つめ直すことになったといえるでしょう。
 一方、避難所のチラシや手記などを収集・保存しようとする活動が、市民あるいは地域や大学の図書館などによって取り組まれました。これは、それらのものが歴史を語る資料として捉えられたという側面を持ちます。被災資料の救出活動も、救出された資料が地域の歴史遺産であるとあらためて認識されるという意味を持ちました。地域の人びとが、救出された地元の歴史資料を読む活動をおこない、まちづくりに活用されている事例もあります。近年では、こうした災害資料を、防災という枠組みではなく、地域の歴史資料として捉えた展示会などもおこなわれています。
 これらの事例は、災害資料が単に物理的に生み出されるものというのではなく、人びとがそれを救出、保存し、記録し、あるいは伝えようとすることで、災害資料として生成していくものであることを示しています。これは災害時ではなく、日常のなかでも同じことがいえるでしょう。地域の歴史資料は、人びとがそれを認識し、記録し、伝えることによって、歴史資料として生成していきます。災害資料はこうした特徴が強く表れているのであり、これをめぐる問題を考えることは、地域の歴史資料の問題を考えるにあたって、大きなヒントとなることでしょう。
 そこで、今年度の協議会のテーマは「地域歴史文化の形成と災害資料」としました。災害資料をめぐる人びとの活動や、それを支える環境の構築などの諸課題を考えることを通じて、地域歴史文化の形成・継承のために、大学・自治体・市民が連携し、何をすべきなのか、何ができるのかを考えていきたいと思います。

 地域連携協議会は、地域歴史文化に関わるみなさまの相互交流の場であります。協議会の間には、時間をとり、各団体の方々が交流できるコーナーやポスターセッションの場を設けます。多くの方々に活動の成果物や書籍をお持ちよりいただき、展示・交流していただければ幸いです。ご参加をお待ちします。

プログラム

11:00〜11:10 主催者挨拶
11:10〜11:20 趣旨説明(奥村 弘・神戸大学地域連携推進室室長)
11:20〜11:30 今年度の協議会のねらい(板垣貴志・神戸大学大学院人文学研究科特命助教)

11:30〜12:10 報告(1) 兒玉州平氏(人と防災未来センター震災資料専門員)
   「災害展示の方法を考える―人と防災未来センター資料室の取り組みから―」

12:10〜13:00 昼食・交流会

13:00〜13:40 報告(2) 宮本 博氏(兵庫県立図書館館長補佐)
   「地域歴史文化の形成拠点としての図書館−災害資料を伝えることの意味−」

13:40〜14:20 報告(3) 高森順子氏(人と防災未来センター震災資料専門員)
   「手記集を介したコミュニティ―「阪神大震災を記録しつづける会」の活動変遷―」

14:20〜14:50 交流会

14:50〜15:30 報告(4) 小長谷正治氏(伊丹市立博物館館長)/水本有香氏(同震災資料調査員)
   「博物館と災害資料」

15:30〜15:45 コメント 上村武男氏(水堂須佐男神社宮司)

15:45〜17:00 総合討論

17:30〜19:00 懇親会

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協議会の記録

この協議会の内容については、神戸大学学術成果リポジトリKernel掲載の報告書をご覧ください。

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