研究科長からのメッセージ
  人文学研究科長 佐々木 衞

 神戸大学大学院人文学研究科は、文化学研究科(博士課程)と文学研究科(修士課程)とを改組・統合して、2007 年4 月に新たな一歩を踏み出しました。

 人文学とは、「人間とは何か」、「社会とは何か」という問いに答えようとする人間の営為の結晶です。この人文学的営為は、グローバル化と科学技術の急速な進展が社会構造の再編、文化価値の変動、言語表現の変容を引き起こしているなか、新たな倫理と社会規範への問いとして、現代的かつ現実的な意味を深めています。

 人文学研究科の教育目的は、まさにこの人文学の現代的課題を踏まえて、「人文学の原理論的研究とフィールドワークを重視した社会文化の動態的分析を通じ、文化的現象の現代的意味を問うことのできる人材、あるいは新たな社会的規範及び文化の形成に寄与する人材を養成する」ことにあります。そのために、高次の専門性と総合性とを兼ね備え、現代的課題に対応できる能力の強化を目指して、人文学分野の共通科目の開発と実施を行ってきました。とくに本研究科固有の四つの共同研究組織「海港都市研究センター」、「地域連携センター」、「倫理創成プロジェクト」、「日本語日本文化教育インスティテュート」を設置して、多くのプロジェクト研究を組織してきました。それらプロジェクト研究を通じて、海外連携大学を含む学内外の多様なネットワーク及び神戸の海港都市としての文化的歴史的特性を活かした多彩なフィールドワークによって多くの実績を挙げてきました。

 上記の教育目的をより高い次元で達成するため、新たな教育プログラムとして「人文学フュージョンプログラム」を構築してまいります。前期課程では、学生の人文学研究発展の基盤となる学域横断的な「古典力」と「対話力」の育成に重点を置きます。後期課程では、「古典力」を更に発展させつつ、学域横断的に学生が意思疎通できるより進んだ「対話力」、人文学の現状や成果を学生が市民に表現する伝達・企画運営能力としての「アウトリーチ」の力、及び人文学分野の新たな研究対象・方法・理論を開発するに至る高度な「学術的対話力」の醸成に重点を置きます。こうした点で、本取組は、古典力と対話力といった観点から、フィールドワークと原理論的研究の両手法を融合させた教育システムを構築し、社会の人材ニーズに応えていこうとするものです。

 

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