尼崎市との連携事業

 地域連携センターでは、おもに尼崎市立地域研究史料館と連携し、以下のような取り組みをおこなっています。

中在家町町並み絵図の復元

 「中在家町町絵図」(尼崎市立地域研究史料館〔以下、史料館〕所蔵梶廣子氏文書)は、城下町尼崎を構成する町の一つである中在家町の、近世末期における屋敷地の間口・奥行とその所有者が記された、当時の町を理解するにあたって欠かせない基礎史料です。しかし、原史料は上下二冊の書札形態で、町内全体を一度に把握することができませんでした。そこで、「尼崎の近世古文書を楽しむ会」の会員である島原典子さんと公手博さんの手により同絵図の解読と空間復元がなされ、手書きの復元絵図が完成しました。このような市民の方々が取り組まれた成果をさらに地域の歴史研究のコンテンツとして広く公開し、また誰もが容易に活用できるように、2003年以降史料館と当センターとの共同研究として同復元絵図のデジタルデータ化が進められました。その成果は2005年6月4日に開催された講座「地域の歴史コンテンツづくりの可能性―完成した中在家町町なみ復元絵図デジタル版―」(於・尼崎市総合文化センター)で発表され、研究者をはじめ、多くの市民の方々の反響を呼びました。

尼崎市制90周年事業への協力

 2006年、尼崎市制90周年事業・『尼崎の歴史展』の展示作業を、当センターが尼崎市立地域研究史料館、尼崎市教育委員会歴博担当(当時)と連携して行いました。展示は、第1部は古代〜近代の通史展示、第2部は市制施行後の尼崎の歴史、第3部は尼崎の市民がつくる歴史展示の三部構成でした。第1部の中世の展示については、神戸大学文学部の日本史演習において著名な尼崎の寺院のひとつである大覚寺の中世文書をテキストとして学んだ学生有志四名が、演習での成果をもとに展示を企画、中世コーナーの展示パネル、解説シートなどを作成しました。
 また、関連事業として、歴史展会期中の10月7日に子供向けワークショップ「尼崎の土地の成り立ちと歴史を学ぶ」を企画、開催しました(於・尼崎市立総合文化センター)。同企画は、歴史展における通史展示のコンセプトが、尼崎の土地形成と連動させながら各時代の歴史的事象・事件をとらえるというユニークな内容であったことから、かかるコンセプトの理解を深めることと、学習教材として結実させることを目的として行われたものです。実体視体験のほか、航空写真による旧道の復元などを行いました。当日は小学生を中心に児童一八名とその保護者、あわせて約30名の参加を得ました。また、学習教材として広く活用をはかってもらうために、同ワークショップ企画の内容について、『尼崎市立地域研究史料館紀要 地域史研究』(37-1、2007年)に掲載しました。

宝珠院文書研究会

 2006年度に新たに紹介された京都大学総合博物館所蔵「宝珠院文書」は、中世長洲荘に関わる文書を多く含んでおり、今後、尼崎市史を構想する上で重要な文書群です。これに鑑み、2009年9月より中世史の研究者を集め「宝珠院文書」の内容を検討する宝珠院文書研究会を継続的に開催しています。これによって、研究成果を蓄積し、将来的にそれを活用していくことを目指しています。