2014年の活動内容

全体

♦第1回地域歴史資料学研究会
  • 日時:2014年9月12日(金)14:00~17:00
  • 場所:リッチモンドホテルプレミア仙台駅前会議室

  • 本研究会では本科研研究の開始にあたり、まず研究代表者の奥村弘より研究概要、研究体制と全体計画について報告がなされました。本科研研究は、2013年度までの科研基盤研究S「大規模自然災害時の史料保全論を基礎とした地域歴史資料学の構築」(代表者・奥村弘、課題番号21222002、研究期間2009~2013年度)の成果を踏まえ、阪神・淡路大震災以来のデータ再整理と東日本大震災のデータ収集整理との結合のうえに、被災歴史資料研究と災害資料研究を展開し、災害史研究や保存科学・博物館学等の隣接諸分野との融合を通して、東日本大震災後の新たな課題(津波、放射能被害など)及び海溝型地震への対応をさらに進め、「災害文化」形成に資する地域歴史資料学を確立するという、研究手法と目的が再度確認されました。  次いで、東日本大震災の被災歴史資料・震災資料の保全の現状と課題について、天野真志氏(東北大学災害科学国際研究所)、阿部浩一氏(福島大学)、添田仁氏(茨城大学)、白井哲哉氏(筑波大学)、矢田俊文氏(新潟大学)から報告があり、東日本大震災から3年が経つなかでの救出資料のクリーニング・整理作業の進捗状況や、避難所資料をはじめとする震災資料の保全の現状と課題、資料保全と災害史研究に関する論点などについて意見が交わされました。さらに、被災資料のクリーニング・整理に携わる作業者の健康・安全確保の必要性が確認されました。  また、前田正明氏(和歌山県立博物館)より、2011年9月の紀伊半島大水害以降の資料保全に関する取り組みが報告され、災害と文化財に関する展示活動や、地域の「災害の記憶」(特に南海・東南海地震津波)に関わる記念碑・古文書の調査研究について紹介されました。



♦2014年度被災地フォーラム宮城
 公開シンポジウム「故郷の歴史と記憶をつなぐ――東日本大震災1400日・史料保全の「いま」と「これから」」

    本研究グループが毎年度開催する「被災地フォーラム」は、被災地等での実践的研究から得られた成果や課題を検証する場です。この「被災地フォーラム」は、本研究グループの内部研究会・公開シンポジウム・被災地巡検で構成されます。  2014年度は東日本大震災の現状把握と課題整理を行い、研究土台の共有を図るため、2014年11月29~30日に宮城県で「被災地フォーラム」を開催しました。

  •   日時:2014年11月29日(土)13:00~16:20
  •   会場:仙台市博物館ホール

  •   開会挨拶:平川新氏(宮城学院女子大学学長・NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク理事長)
  •   報 告①:佐藤大介氏(東北大学災害科学国際研究所准教授)「東日本大震災で被災した民間所在史料の救済・保全活動の現状」
  •   報 告②:金野聡子氏(岩手/紙本・書籍保存修復)「“記憶”に残る“記録”をつなぐ」
  •   報 告③:庄司惠一氏(宮城/石巻古文書の会)「石巻古文書の会の活動 震災のあとさき」
  •   報 告④:門馬健氏(福島/富岡町役場)「旧警戒区域における民有地域資料の救出活動――富岡町の試み」
  •   コメント:天野真志氏(東北大学災害科学国際研究所助教)、内田俊秀氏(京都造形芸術大学名誉教授)
  •   総合討論:(司会)奥村弘

  •   【主催】科学研究費補助金基盤研究S「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立―東日本大震災を踏まえて」研究グループ
  •       東北大学災害科学国際研究所 歴史資料保存研究分野、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク
  •   【共催】仙台市博物館

  •   ◇被災地巡見
  •   日程:2014年11月30日(日)
  •   巡見先:宮城県石巻市内(本間家土蔵、石巻市文化財保管庫ほか)

  •  今回の公開シンポジウムでは、岩手県・宮城県・福島県の被災地に暮らし、様々な立場で地域の歴史や記憶を守るための活動に取り組んでいる方々からの報告を受け、震災前の状況や今後の課題、被災した方々にとって資料保全活動の果たしている役割について共有することを目的として開催しました。
  •  本シンポジウムの趣旨説明を兼ねる佐藤報告では、地域社会に膨大に残されている歴史資料が、社会変化と災害などにより散逸・滅失の危機に直面している現状が指摘されました。また、東日本大震災での宮城歴史資料保全ネットワークの取り組みが紹介され、被災地において地域の歴史・記憶を将来に伝えるための仕組みづくりの必要性があらためて指摘されました。
  •  金野報告では、海外での保存修復経験や岩手県大船渡市での取り組みを通して、個人所蔵の写真・古文書などを救うことは、歴史を救済し、残し、後世に伝えていくことであると、その意義が指摘されました。また、東日本大震災の際の大船渡での保全活動では、なにげない記録が被災者の心の支えになっていることが指摘されました。
  •  庄司報告では、1982年から活動を続けている「石巻古文書の会」の取り組みが紹介されました。東日本大震災後は「女川こもんの会」と合同勉強会を開催するなど、地域住民自らの手で古文書を解読し後世に伝える活動が再開される一方、後継者難の現実を踏まえた事業継続が課題であることが指摘されました。
  •  門馬報告では、福島原発事故によって住民が離れ離れになり、元の居住地を公にすることさえ憚られるといった深刻な現状が指摘され、そうした状況にあって、町の若手職員を核とした「富岡町歴史・文化等保存プロジェクトチーム」の発足と取り組みが紹介されました。地域の歴史資料を後世に残す活動を通じて歴史文化を軸とした結びつきを築いていく重要性などが指摘されました。
  •  天野・内田両氏のコメントを受け、全体討論では地域社会における歴史文化の位置づけや、資料保全の担い手(高大連携や図書館活動などとの連携)とそれを育てる場としての大学の役割、震災記録の保存などについて活発な議論がなされました。
  •  11月30日には、宮城県石巻市内で被災地巡見をおこないました。同市門脇地区の復興のシンボルとなっている本間家土蔵や、被災文化財収蔵庫を視察し、歴史文化の被災状況や復興との関わりについて所蔵者や自治体職員らと意見交換しました。
  •  ※本フォーラムの記録については、奥村弘・佐藤大介編『被災地フォーラム宮城報告書:ふるさとの歴史と記憶をつなぐ』(2015年3月)をご参照ください。



♦シンポジウム「災害史を研究し続けること、史料を保全し続けること」
  •   日時:2014年12月6日(土)13:30~17:50
  •   会場:新潟大学総合教育研究棟1階大会議室

  •   ◇第1部 史料保全と被災地
  •   吉原大志氏(人と防災未来センター)「阪神・淡路大震災 震災資料の20年」
  •   山崎麻里子氏(長岡震災アーカイブセンターきおくみらい)「中越メモリアル回廊の取り組み――地域と共に残し・伝える」
  •   五十嵐聡江氏(葛飾区郷土と天文の博物館)「被災者に寄り添う復興支援と文化遺産の活用――岩手県山田町山田史談会との交流から考える」

  •   ◇第2部 災害史研究の意義
  •   吉田律人氏(横浜開港資料館)「関東大震災90周年の成果と課題――横浜市の博物館及び文書館の視点から」
  •   中村元氏(新潟大学災害・復興科学研究所)「新潟地震から考える日本近現代史研究と災害史研究」
  •   田嶋悠佑氏(新潟市歴史博物館) 「新潟地震を研究すること――新潟地震展を担当して」

  •   ◇パネルディスカッション  (司会)矢田俊文氏(新潟大学災害・復興科学研究所)

  •   【主催】新潟大学災害・復興科学研究所危機管理・災害復興分野
  •   【共催】科学研究費基盤研究S「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立―東日本大震災を踏まえて」研究グループ
  •       新潟大学人文学部地域文化連携センター、新潟歴史資料救済ネットワーク、新潟史学会

  •  このシンポジウムは、新潟大学災害・復興科学研究所危機管理・災害復興分野が例年開催しているもので、2014年度は本科研グループも共催に加わりました。本科研グループでは地域歴史資料学と災害史の融合について研究課題に掲げています。本科研グループとしては、その領域の重要な一環をなすシンポと位置づけています。
  •  今年度は新潟地震から50年、中越地震から10年、また2015年1月には阪神・淡路大震災20年を迎える節目の年にあたり、災害の歴史を後世へ引き継いでいくために、災害史研究と史料保全を継続し続けていくことの意味を考えるシンポジウムとなりました。



♦国立文化財機構アソシエイトフェロー研修会
  •   日程:2014年12月8日(月)~10日(水)
  •   会場:神戸大学文学部A棟1階学生ホールほか

  •   講義1:村上裕道氏(兵庫県教育委員会事務局)「1995年阪神淡路大震災への対応① 行政の対応」
  •   講義2:村上裕道氏(兵庫県教育委員会事務局)「1995年阪神淡路大震災への対応② 建造物への対応」
  •   講義3:奥村弘(神戸大学教授)「1995年阪神淡路大震災への対応」
  •   講義4:田辺幹氏(新潟県立歴史博物館)「地方における局地的災害への対応」
  •   関連施設見学:神戸大学附属図書館震災文庫、浜手バイパス被災橋脚、神戸港震災メモリアルパーク・メリケン波止場、人と防災未来センター
  •   講義5:町田哲氏(鳴門教育大学准教授)「徳島史料ネットと南海トラフ巨大地震への対策」
  •   講義6:三本周作氏(和歌山県文化遺産課)「和歌山県の文化財防災の取り組みについて」
  •   講義7:藤隆宏氏(和歌山県立文書館)「和歌山県における歴史資料災害対策の歩み」
  •   講義8:大国正美氏(神戸新聞社、神戸深江生活史料館)「市民と取り組む地域歴史遺産の防災対策」
  •   演 習:ケーススタディ方式による災害対応策の机上立案

  •   【主催】独立行政法人国立文化財機構
  •   【共催】神戸大学人文学研究科地域連携センター
  •   【協力】科学研究費基盤研究S「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立―東日本大震災を踏まえて」研究グループ

  • 独立行政法人国立文化財機構に2014年より設置された「文化財防災ネットワーク推進本部」は、その推進事業の一環として、国立博物館4館及び文化財研究所2所にアソシエイトフェローを新たに採用しました。  この研修会はアソシエイトフェローを対象として、阪神・淡路大震災から新潟中越地震までの被災文化財への対応を検討し、南海トラフ地震・津波など今後起こり得る大規模自然災害に対して十分な対応能力を備えることを目的として開催されました。  本科研グループはこの研修に研究協力し、内田俊秀氏(京都造形芸術大学名誉教授)が全体のコーディネートを行うとともに、奥村弘(神戸大学)、町田哲氏(鳴門教育大学)が講師を務めました。



♦第2回地域歴史資料学研究会(第4回被災地図書館と震災資料の収集・公開に係る情報交換会)
  •   日程:2015年1月23日(金)
  •   会場:神戸大学附属図書館フロンティア館

  •   報告1:稲葉洋子氏(帝塚山大学)「「震災文庫」が歩んだ20 年、未来へつなぐ震災資料」
  •   報告2:田中洋史氏(長岡市立中央図書館文書資料室)「中越大地震の経験から~新潟県長岡市における震災資料の収集・整理・保存・活用~」
  •   報告3:報告③:奥村弘(神戸大学大学院人文学研究科)「大規模災害の記憶の共振とその歴史化――阪神・淡路大震災と東日本大震災の資料から考える」
  •   参加各館からの現状および課題の報告・意見交換

  •   【共催】震災復興支援・災害科学研究推進活動サポート経費「災害資料学の実践的研究―阪神・淡路大震災の知見を基礎として」、都市安全研究センタープロジェクト「阪神・淡路大震災に関する資料の保存・活用および東日本大震災に関する資料との比較を通じた実践的研究」、神戸大学附属図書館、阪神・淡路大震災資料の保存・活用に関する研究会