神戸大学大学院人文学研究科倫理創成プロジェクト

アスベスト問題に関連する研究成果や情報

アスベスト被害聞き取り調査—中村實寛(さねひろ)氏 [2006-09-12]

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松田

中皮腫という病気そのものは、私もそうですけど、今回のことが起こるまで知らなかったし、医者も中皮腫そのものを、そんな知らないんじゃないか、と粟野さんの本にも書かれています。中村さんの場合はどうだったんでしょうか。その辺のところ。お医者さんの認識ですが。

中村

僕の場合は、この健康診断受けたとこの内科の先生から、ここでは何も治療もできないから専門医に行きなさいというアドバイスもらって、その写真と紹介状を書いてもらって、総合病院に行ったんですよ。北摂の総合病院なんですけどね。内科の先生は、一応検査しましょうと。その診断はまだつかないからということで、検査、検査を続けてきたんです。

ほんで4月の中ぐらいですかね。10日前後やったかな。その病院で胸部外科の方と今までずっと相談しながら検査見てきたんやけど、これから外科の方で診ていこうかと言われて、そんで外科の方で診察に行ったんですけど、そんで細胞検査しようとなったときに中皮腫の疑いというのが、一応説明で出てきましたんで。あれは多分、細胞検査するのが5月2日にしたんで、その時の説明なんですよね。ここで胸膜中皮腫の疑いっていう言葉が出てきとんですよ。そんで生検しましょうと、胸腔鏡で内視鏡を使ってと。

松田

そこの大きな病院には、こういう専門医がおられる。

中村

でも、この部長先生なんですけど、この部長先生と、そんで僕の主治医と二人とも、後で聞いた話ですけど、うちの病院で初めてなんやと。(そう)言われましたので。

松田

北摂の総合病院と言えば大きな病院ですよね。

中村

そうですね。700ぐらいのベッド数ですね。

杉川

確か中村さん、全く気づかれずに。

中村

うん。一番最初その健康診断を受けたときも、淀川健康管理センター、この先生が、ここに肺野の胸膜肥厚と書いてあるんですね。これは総合病院には見せてないんですけどね。多分、紹介状にこれを書いてたんじゃないかなと思うんですよ。

杉川

最初の健康診断の先生が。

中村

怪しいと思って、胸膜肥厚ありますよと。ただこんだけのレントゲンの写真だけで、胸膜肥厚ありますという、一応診断を下してるんですよね。

松田

中皮腫じゃないのですか、説明があったのは。

中村

そうだと思います。

松田

でもその健康診断のお医者さんはすごいですね。

中村

僕の主治医も、この部長先生も「中村さん健康診断受けたとこの内科の先生はすごい先生なんやなあ」って言われましたから。

杉川

逆にそれくらい、普通はもう気づかない。

中村

だと思うんですよね。

杉川

さらに何かあるなあと思っても、中皮腫まで気が付かない。

中村

いかない。かもわかんないですね。

中村

半年か1年で真っ白けになるみたいですから。こういうのが出てきとんですよね。ほんで、この間、言いましたように、古川さんへの相談で。検査説明書のここでは胸膜中皮腫になってますよと。ここでは胸膜腫瘍になってますとか。この資料持って行って、労災のお手伝いしてくださいって持って行った時、病名が二つになっとるんですけど。僕は胸膜腫瘍というのを腫瘍やからガンやなという気持ちで、どのような労災認定になるんでしょうか、とりあえず資料持っておいでいうことで。

松田

こちらの病名(胸膜腫瘍)ではならない。

中村

ならないんですよ。中皮腫でなかったら。

松田

ちょっとその点がわからないですね。

杉川

中皮腫の労災認定を受けれるということは、やはり労働環境への間違いだというような今はちゃんと規定としてあるわけですか。

中村

これは先生ね、そんだけの一応、職歴とか、証明できたら。

杉川

アスベストに中皮腫になるのは、やっぱり仕事ですから、業種でしかないという意見とかあったのですか。

中村

あったんですね。

松田

この人はここの病院が労災認定させないでおこうと思って、こう書かれたわけでも ないですね。

中村

ううん、ないですよね。いや、このとき、この頃は労災の話なんか、全然、僕もしてないし。

松田

少し危険な検査もあるんですか。

中村

一応、この生検したら、電子顕微鏡で見たら、何か石綿があるらしいんですよね。それで一応、判断、中皮腫という判断ができると。ですから細胞をとらんことには、どっちにしろ診断というのはつかないんですよね。

松田

今はこちらになったと言ってよろしいんですか。

中村

はい。最終的にはもう悪性胸膜中皮腫という診断ですよと、部長先生が、電話の先だったけど、言うてくれたんで、そんでそれで手続をして、あとは病院との書類、書いてもらったんですよね。

杉川

もしかしたら、何年か疑いもあれば精密検査してくれればいい、と。レントゲン程度じゃわかりにくいのですね。

中村

分かりにくいですよね。適格な診断というのは。

杉川

精密検査して、自分は建築現場で働いていたから中皮腫汚染のあれですから、肺をもう少し詳しく見てといえば、もっと発見率が上がる。

中村

そうですね。でも、その先生がレントゲンをまず一番、最初はどこでもそうですけど、今でも尼崎の健診でも一番、第1回目の健診というのは単純のレントゲン検査だけですから、そのレントゲンを読影する先生おかしいと思ったら、二次検査を受けなさい、いう指導があるわけですけどね。だから先生によりけりなんですよね。ですから、命を預けるんも、当たりはずれがあるんですよね。

松田

いかに疑いをもって見るかですね。

杉川

もっとセカンドオピニオンとかで、あちこちの先生に見てもらうというのは。

松田

多分、中皮腫の疑いがある点を感じられるお医者さんがいたら、それはいいお医者さんですね。

中村

おったら、いいんですよ。

松田

どれくらい日本全国にいるか。

中村

少ないと思うんですよね。

松田

それには医療や医者の教育の問題があると思うんですけど。

中村

うん。ですからそれも厚生労働省に僕らは、尾辻前厚生労働大臣と去年の10月16日に大阪労働局で面談を行ったときに言ったんですよ。とりあえず医者を育ててください。中皮腫の医師、専門の医者を。ですからちょうど10月16日、15日時点で日本全国で500何人、530人ぐらいいると言いましたかね。講習受けてると。

そういう答えが返ってきたんですよ。事務方から。ですから、とりあえずもう去年の段階で500人ぐらいはどっかの労災病院で研修を受けてると思うんですよね。簡単なもんでしょ。例えばレントゲンの読影とか、CTの影像の読影だけですから、知識が元々あるドクターやから。

松田

病気の疑いの気持ちでは見ますよね。

中村

そうです。とりあえず、多分僕らがお願いするんであれば、まず受診者の職業を聞いて、疑いの目をもって診察してくださいというふうに指導しますけどね。

杉川

今そういう先生が足りなかった場合用に患者さんの方も、もしかしたら中皮腫の可能性があるのでその先生にお願いしますと。

中村

そうですね。それとまた一つの病院で、ちょっと納得いかなかったら、セカンドオピニオンみたいな感じで、もう一件診察を受けてみるとか、もうそういうのが自己防衛みたいな感じで自分でやっていくしか、今の日本では難しいと思うんですよね。

杉川

行ってもらわないと。

中村

そうなんですよ。とりあえずはそういう健康診断を促すのが、もちろん政府の仕事なんやけども、政府、環境省と厚生労働省の仕事なんやけども、そういうのを一つも(やってくれない)。例えば、新聞の一面に厚生労働省からのお知らせとかいうような、流してくれるのが一番いいんですけど。

松田

それは無理でしょうね。

中村

やらんから、われわれがちょっとした何か署名活動をしたりするついでに、マスコミに協力して貰って流してもらうしかないんですよね。

杉川

本人になんかこう伝えるのが難しいのなら。大体、周りから喚起する。家族の人のその奥さんとか娘さんとかにこう、お父さんもしかしたら中皮腫かもしれないということを促す。

中村

そうなんですよね。そこらがどこまでどうしてやるんか、一番いいかというのを、 これから考えていかんといかんのですよね。

杉川

自分ぐらいの若い世代、二十代ぐらいだったらパソコンを使うのも。

中村

うん。ある程度、情報。

杉川

アクセスの仕方というのを。多分ちょっとアクセスしてみようかという。

中村

そうですね。ほとんどがあれでしょ。そういう何ていうかな、情報を得るとこがまずないから、そこらをどうにかしないといけませんね。

松田

(そういう場所は)増えてるんですか。

中村

わずか15%って書いてまっしゃろ。

松田

組合のアンケートですね。多分このタイプの方は、健康診断とか嫌いですよね。はっきり言ってね。

中村

ですから、これが去年の7月18日でしょ。クボタショックの後すぐなのに。直後でそんだけでしょ。例えば、一ヶ月とか半年とか、向こうやったらもうぼやけてきてという見方もあるけど。大々的にテレビとか、新聞とか賑やかな部分でこんだけですから。でも、東京に行って聞いたら、大阪、関西よりもものすごい冷めてるなぁと、関東は。これアスベスト問題も、そういう話が多かったですね。やはりクボタが尼崎やから、関西はものすごいなぁと。新聞の報道でも、大阪で例えば、これぐらいの報道されとったら、関東ではこれ以下や言うてます。

杉川

ああ、何か関西の事件みたいな。クボタが尼崎ですので。ほんとはその日本全国規模の問題なのに。もうクボタだけが問題のように扱って、それ以外には何にも。

中村

そうなんですよ。やっぱり被害に遭ってる人とか、もう遺族の人なんかは、敏感になってるから、みんな必死で新聞記事とか、そういうのを見るんですけど、一般の人というのは、やっぱりそんだけ認識薄いんでしょうね。ですから、報道関係もそんな雰囲気ですから。

松田

ただ世界アスベスト会議自体は、クボタショックの前になりますね。私はたまたま、かもがわ出版の『ノンアスベスト社会のために』という本を見て、おおよその認識はあったんですけれど、結構、東京に被害者や運動があると思ったのですが。

中村

あれは石綿全国連絡会議とか。

松田

そういう本を出されていましたし。そういう認識が出てきてたのかなと思ったんですけど。

中村

そうですね。でも、やはりあれも全建総連、全港湾、全造船の方々のバックアップ 大きかったから。やはり全建総連もかなりバックアップしてましたけど、どうしても上辺だけなんですよね。ですからもう、ほんまのその目の前のことだけですから。2004年アスベスト東京会議は有意義な会議だったと思いますよ。かなり日本の実情を知ってもらってて、書いてもらったから。

松田

その会議自体は報告書みたいなのが、何か出ているんですか。

中村

報告書はまだできてないですね。まとめる側が忙しくて。出す言うてますけどね。石綿全国連絡会議のほうが。

松田

そろそろ12時前なので、2時間近くお話聞いたので、きょう1回目これで終わりということにさせていただいて、まだ何か、多分半分も聞いてないような感じがするんで、申しわけないですけど、またもう一度、お話伺うということでよろしいですかね。

中村

はい。

松田

本日はどうもありがとうございました。

中村

ありがとうございました。

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