そもそものはじまり


1.国立大学と県立高校との連携

 国立大学の学部と県立高校の連携というあまり例を見ない組み合わせは、2006年文部科学省「資質の高い教員養成推進プログラム」に、神戸大学文学部が申請した「地域文化を担う地歴科高校教員の養成」が採択されたところから始まりました。

2.地域歴史遺産(地域文化)を担う教員養成

 神戸大学文学部には、地域歴史遺産(地域文化)の保全・活用の研究とそれを担う人材育成を行う「地域連携センター」が設置されています。地域連携センターは、学芸員などの専門家の養成だけでなく、地域歴史遺産の保全・活用を在野で担うことのできる人材の育成をめざしており、そのための授業科目も設けています。「資質の高い教員養成推進プログラム」への申請は、こうした人材育成の取り組みの一環として行われました。

 中学や高校の社会科(地歴科)の教員の中には、地域の歴史、地理、文化、民俗等に関心を持ち、みずから調査・発掘をするなど、その分野の専門家として活躍された方も少なくありません。しかし昨今、教員の多忙さは社会問題にもなるほどで、それにともなって学校以外の場所で専門性を活かして活躍する機会も減ってきています。他方で地域社会は、経済の発展とともに活力を失い、人間関係も希薄なものとなり、コミュニティの崩壊が進んでいます。こうした時代に、地域を成り立たせてきたもの、すなわち地域歴史遺産は、ますますその重要性を高めてきていると言えます。

 以上のような問題意識を背景として、神戸大学文学部では、地域歴史遺産の保全・活動を担ってゆける技能と熱意を持った教員養成を行うとともに、それを地歴科の教材として取り入れることを通じて、次の世代の担い手を養成するという循環(図を参照)を構想して、文部科学省のプログラムに応募しました。そして2年間の試行を経て開発されたのが、県立高校と連携した「地歴科教育論」の開講です。

 

3.兵庫県立御影高校との連携

 兵庫県立御影高校は、神戸大学文学部からバスで15分ほどのところにあります。神戸大学文学部では、授業科目「地歴科教育論」を御影高校総合人文コース2年生の「GS人文地理」(GSはGlobal Studeyの略)とを連動させ、高校生が地域をテーマとして班別に行う探究活動を、大学生が支援することを通して教員としての実践力を高めるという授業を行っています。教員をめざす学生が高校教員から直接指導を受けながら経験を重ね、教員としての資質を高めるだけでなく、大学生と大学教員が高校生の探求学習を支援するという、互いにメリットのある高大連携のモデルとして、すでに10年以上の実績を重ねてきました。

 このHPでは、毎年の活動を逐次公開していきます。