概要

 「総合大学」に籍をおき、研究と教育の職務を行う者にとっては、わたしたちが暮らす現代社会において「科学的知識とは何であり、どのようにあるべきか」を、医学・生命科学を含む、自然科学だけでなく、人文・社会科学も視野に根本的・全体的に問い直すことは、今や不可避の課題となっています。この課題について「メタ科学技術研究プロジェクト:方法・倫理・政策の総合的研究」は、3つの観点、つまり科学的探究の方法と価値規範、政治経済的要因を重視します。本プロジェクトは、「ディシプリン」を基盤に表現するならば、「科学方法論」、「科学技術倫理」、「科学技術政治経済学」の3部門からなります。
 どのような具体的テーマ・課題に取り組むかは、「メタ科学技術研究ワークショップ(WMST)」を通じて絞り込んでいる段階ですが、すでにある重要な問題や社会的に認知された課題だけでなく、近い将来登場しうる先端的研究分野の開発や新技術の社会実装に関する倫理・政策的問題の先取りを含め、科学と技術の問題を学際的・国際的に研究し、神戸大学の文理融合研究の推進に貢献します。
 本プロジェクトは、観点・部門に応じて、クラスターを作り、共同研究します。

科学方法論クラスターC-MS

 自然科学だけでなく、社会科学、人文学・人間科学の方法の基礎に関する先端研究を行います:実験、シミュレーション、調査、文献解釈、アクション・リサーチなど、現代科学の現状・現場に即した問題提起と討議を行います。科学技術の研究の基礎にある多様な方法論(「科学的真理」の探究と正当化)と社会倫理・法問題を連動させ、研究成果を将来的に大学院・学部共通教育のカリキュラムにも落とし込むことも目指します。

科学技術倫理クラスターC-EST

 科学探究の規範としての研究倫理、知的財産の倫理と法、先端的な生命医療の倫理、ケアと公衆衛生の職業倫理、工学倫理、情報倫理、環境倫理(持続可能な社会の制度・規範)等の課題に関する研究。これらについては、応用倫理学、STS(科学技術社会論)、科学技術コミュニケーションの実践的研究者、知的財産に関連する法学、企業論などの研究者の参画により研究の社会的実効性を担保します。

科学技術の政治経済学クラスターC-SPE

 科学技術を中心に「知識基盤社会」の歴史と現在を分析し、研究の政策的前線配置を見据え、世界的競争環境での科学と大学の今後の有り様を多方面から研究します。政治経済の観点から科学技術の問題を大学の文脈で考えるとき、企業活動、国の政策を抜きに考えることができない一方、多様な属性を有する消費者・市民を含む、関係者への説明やアウトリーチ・交流対話(コミュニケーション活動)も無視できない不可欠の要因となっています。これらの諸側面から現代の大学を取り巻く社会的環境にふさわしい科学技術研究のあり方を討議する必要があります。それが、経済学、経営学、法学の社会科学系分野に強い、神戸大学の特性を活かし、科学技術の問題を突破口とした、人文社会系の融合研究推進の一歩となりうるものと考えています。

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