―基層・動態・持続可能な発展―

Basic structure,Dynamics, and Sustainable Development

 

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2007年調査報告(日本・豊岡市)

◇概要

 兵庫県北部但馬地域に位置する豊岡市は、2005年に旧豊岡市、城崎郡城崎町、竹野町、日高町、出石郡出石町、但東町の対等合併により誕生した兵庫県下最大の地方都市である。面積697.66平方キロメートル、人口91,130人(豊岡市HPより:2007年10月31日現在)。約8割が森林であり、北に日本海、東は京都に接し域内には円山川を有する。近世期には出石藩、豊岡藩、天領を含む当地域は、域内でもさまざまに異なる歴史と文化を内包している。今回はこの豊岡市を旧町単位6つのエリア(豊岡、出石、但東、日高、竹野、城崎)で捉え、それぞれの地域的特徴をその歴史に留意しつつ視察を行った。
〈豊岡〉
 旧豊岡藩に相当する豊岡エリアは行政の中心であり市役所、公立病院、私立図書館といった公的施設が集中している。産業では豊岡藩の専売制であった柳行李生産をルーツに戦中・戦後にかけてかばん製造業が発展し、郊外の豊岡かばん団地は観光スポットとしても知られている。本地域は日本で最後のコウノトリの生息地として知られ、市をあげてコウノトリの保護・繁殖・共生に取り組んでいる。市のシンボルとしてまちの至るところにコウノトリの絵が飾られ、特産品、公的施設にはコウノトリの名が冠されている(コウノトリの郷米、コウノトリ但馬空港など)。旧市街地には近代的大型ビルが少なく商店街の人通りも少ないが、旧市街地を抜けると飲食チェーン店、洋服店など郊外型ロードサイドショップが軒をつらねており、大手ショッピングモールは週末になると地元および周辺町村の家族連れでにぎわう。
〈出石〉
 豊岡エリアから426号線沿いに南下した場所に位置する出石は、城下町の情緒を残す町並みに出石そばや土産物店が立ち並ぶ。但馬観光においては城崎温泉からの帰路に蕎麦を食べに立ち寄るところとして人気を博しているようだ。旧出石藩に位置する当地域は、明治以降、小林秀雄といった偉人を輩出している。
〈但東エリア〉
 出石エリアの東部に位置する但東は山がちで、やや閑散とした集落風景の並ぶ農村地域である。域内施設としては日本・モンゴル博物館、但東シルク温泉館などがあげられる。
〈日高エリア〉
 日高エリアは西部に神鍋高原を有し、スキーやゴルフのリゾート地として昭和初頭から開発されている。かつてはすいかやきゃべつなど高原作物の産地であったが、町場も商店や工場、会社などの就業地はさほど多くなく、若年人口流出が進んでいる。町中心部から神鍋高原にいたる482号線沿いにはグランド面積14,000平方メートル、最大収容人数9,700人の超大型開閉式ドーム「兵庫県立但馬ドーム」があり、少年野球の合宿等で利用されている。
〈竹野エリア〉
 旧竹野町は豊岡市西部に位置し、神鍋高原の峠北から日本海までを県道一号線が縦断している。かつては宿場や山越えの要所であったと思われるが、現在では県道沿いにいくつかの蕎麦屋が散見する程度の過疎山村地域である。178号線の高架を北に超えたあたりから視界が開け田園風景が広がり、JR竹野駅周辺は漁村として民家が集中する。竹野浜にはかつて北前船が着いており、現在は寂れた県道一号線がかつては運搬のルートであったことがうかがわれる。
〈城崎エリア〉
 円山川西岸に市街地を有する城崎は古くから温泉町として栄え、現在も関西の奥座敷として親しまれる兵庫県下屈指の観光スポットである。京阪神方面から城崎温泉駅までは北近畿(大阪)、きのさき(京都)、はまかぜ(神戸)など多数の特急列車が直通している。近年は温泉旅館のレンタル浴衣を着ての外湯めぐりが人気を博し、中高年層のみならず若年層カップルやグループ旅行と幅広い年齢層を集客している。
本調査班では、以上6地域の歴史的成り立ちやそれぞれの地域同士の関係、都市部とのつながりや過疎問題といった現代的課題を踏まえてつつ調査を展開していく。

竹野町の漁村風景

 

 

奥井 亜紗子(日本学術振興会・特別研究員、博士(学術))