調査地のインドネシア、ジョクジャカルタ特別州バントゥール県南部は、2006年5月27日発生のジャワ島中部地震の震源地域である。マグニチュード6.3のこの地震は死者5,782人、負傷者36,299人、倒壊家屋135,000棟という甚大な被害をもたらした。
今回は、地震災害が「地方的世界」にどのような影響を及ぼしたのかという観点から、震源域近傍の集落において11月予備調査を実施した。発災からすでに1年以上が経過し、多くの倒壊家屋はすでに復興していた。聞き取り調査では発災から避難、復興に至る各世帯の実態を中心にインタビューした。
引き続き、12月に実施した調査では、予備調査を踏まえて部落長にインタビューを行った。援助に入ったNGOが一定の復興を経て撤退していくなかで、当該部落ではNGOが継続的に被災地に関与していくめずらしい事例であることが判明した。また、インドネシアではKKN(Kuliah Kerja Nyata)と称する農村奉仕活動が、大学生に義務づけられており、約2ヶ月にわたって学生たちが農村に入ることになっている。今回の調査のカウンターパートとなったガジャマダ大学においても、KKNは研究・地域サービスセンター(LPPM)のコーディネートのもとで進められている。被災地の復興という喫緊の課題に対応するため、農村奉仕活動としてのKKNは災害復興を主軸としながら進められている。復興を通じての地域のエンパワーメントをはかるという方向性でKKNは練り直され、これをもってガジャマダ大学は国連大学から「持続可能な開発のための教育(ESD)」の地域拠点(RCE)として認定されている。こうした枠組みの中で、ガジャマダ大学のKKNは多くのNGOとの連携しながら活動を展開している。今回の調査では、この活動の現場も視察し、地域の大学とNGO(海外団体を含む)、さらにJICA、世界銀行などの国際的資金援助枠組みとの連携が、地震復興というかたちで地域社会に一定の影響を及ぼしていることを観察した。引き続き今後は、これらの国際的な復興援助がどのように地域社会に影響を及ぼしているのか、実態的な調査が必要であると考えられる。ラワッグ市は北イロコス州の州都で、2000年の調査によると人口は10,751人である。近隣に製造業はほとんどなく、商業を中心とする経済構造になっている。
KNNの活動展開例。
コミュニティ・ビジネスの展開のための作業場(建築中)。オーストラリアとの提携事業。

仮説シェルターの例。復興住宅完成後も取り壊さず、住宅や納屋として活用されることが多い。

復興住宅建設のための耐震強化の手法紹介のパネル。こうしたパネルが集落内やモデルケースの近くに掲示されている。
林 大造(神戸大学都市安全センター・学術推進研究員)
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