文献案内

このページでは、古代ギリシア史に関心を持たれた人のために、基本的なものから少し立ち入ったものまで紹介していきます。

史料

西洋古代史(ギリシア、ローマ)の文献史料は、京都大学学術出版会「西洋古典叢書」から次々に邦訳が出版されています。
また岩波書店からは、『ギリシア悲劇全集』『ギリシア喜劇全集』『プラトン全集』『アリストテレス全集』、その他、岩波文庫から多くの翻訳が出版されています。
その他、文献史料や碑文史料など、様々なタイプの史料をまとめて、簡単な解説を加えた、以下のような史料集が出ています。

  • 古山正人他編『西洋古代史史料集 第2版』東京大学出版会、2002年。[amazon]
  • 歴史学研究会編『世界史史料集第1巻 古代オリエントと地中海世界』岩波書店、2012年。[amazon]

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    オンライン原典資料

    ギリシア語の史料を原文で読む場合、校訂本を用いるのが一般的ですが、手始めにオンラインの史料を手掛かりにすることもできます。ただし、異読などの確認ができないことが多く、十分な注意が必要です。

  • Perseus
  • 〜無料で基本的な古典文献のテキストが公開されています。
  • TLG
  • 〜古典のテキストを網羅的に見ることが出来ますが、有料です。
  • Jacoby Online
  • 〜古代ギリシア歴史家断片のテキスト、英訳、註釈を検索、閲覧できます。有料です。
  • PHI
  • 〜古代ギリシア世界の相当程度の碑文を無料で読むことができます。
    便利ですが、使用されている碑文番号に独特なものもあり、下記のCLAROSなどを使わないと不便なこともあります。
  • CLAROS
  • 〜これは史料集ではありません。刊本毎に異なる碑文番号の対応が分かります。無料です。
  • IG Online
  • 〜Inscriptiones Graecaeのオンライン版(無料)。ドイツ語訳もついています。
  • SEG
  • 〜上記IGの補遺であり、碑文に関する最新研究が毎年紹介されています。有料です。

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    辞書、事典、地図

  • 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。[amazon]〜邦語で書かれた西洋古典学(古代ギリシア・ローマに関する学問)の事典。英語までは。。。という人はまずこの事典で。
  • S. Hornblower, et al. eds. The Oxford Classical Dictionary, 4th edn. Oxford, 2012. [amazon]〜英語で書かれた基本的な西洋古典学の事典。
  • Brill's New Pauly: Encyclopaedia of the Ancient World. [Brill]〜英語版新パウリー。ドイツ語で書かれた西洋古典学事典、Der neue Paulyの英訳。
  • リチャード・タルバート『ギリシア・ローマ歴史地図』原書房、1996年。[amazon]〜邦語で読める数少ない古代ギリシア・ローマ世界の歴史地図。

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    古代ギリシア・ローマ史通史

    長い伝統をもつ分野ですから優れた通史も沢山あります。ここでは、比較的近年に書かれた手に取りやすいもののみ挙げてあります。

  • 桜井万里子・本村凌二『世界の歴史5 ギリシアとローマ』中央公論社、1997年。[amazon]〜表題通り、古代ギリシア史と古代ローマ史。
  • 同書中公文庫版。[amazon]
  • 伊藤貞夫『古代ギリシアの歴史 ポリスの興隆と衰退』講談社学術文庫、2004年。[amazon]〜古代ギリシャ史の通史。1976年に出版された本の再版。
  • 桜井万里子編『世界各国史17 ギリシア史』山川出版社、2005年。[amazon]〜「ギリシア」を古代から現代まで。
  • 周藤芳幸・村田奈々子『ギリシアを知る事典』東京堂出版、2000年。[amazon]〜古代と近現代のギリシアについて様々なトピックを紹介する。
  • ジョン・キャンプ、エリザベス・フィッシャー(吉岡晶子訳)『図説 古代ギリシア』東京書籍、2004年。[amazon]〜豊富な図版でギリシア史を紹介。

  • ポール・カートリッジ(新井雅代訳)『11の都市が語る歴史』白水社、2011年。[amazon]〜ミノア時代からヘレニズム時代まで、各時代を記すに相応しい11の都市に着目して、古代ギリシア通史を記した本。
  • ロビン・オズボン(佐藤昇訳)『ギリシアの古代:歴史はどのように創られるか』刀水書房、2011年。[amazon]〜いわゆる「通史」ではないが、古代ギリシア史、歴史的なものの考え方について、いろいろなアイデアが詰まっている読み物。
  • 本村凌二編 『ローマ帝国と地中海文明を歩く』講談社、2013年。[amazon]〜やはり「通史」ではありませんが、古代地中海世界各地の遺跡をとりあげた読み物。

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    研究入門、文献解題

    さらに勉強を進めたいと思われる方は、以下の文献を繙くと、研究の手がかりが得られ、参考になる文献を探すことができます。
    卒業論文などのために文献を探したい人は、日本語であれば『史學雜誌』各編の1, 5, 9号の巻末にある文献リスト<西洋史>を最新号から遡って読むとよいでしょう。5号「回顧と展望」は、論文の内容を紹介していますから、参考になるかも知れません(論文への評価はそれぞれの筆者の意見ですから、あまり左右されないよう気をつけたい所です)。邦語論文ならばCiNiiの検索も便利です(が網羅的ではありませんので、ご注意下さい)。欧語文献ならば、Gnomon(図書、論文)やTOCS-IN(主に論文)のサイトを利用するのが便利でしょう。

  • 伊藤貞夫・本村凌二編『西洋古代史研究入門』東京大学出版会、1997年。[amazon]
  • 〜少し古くなってきましたが、日欧の研究文献を分野別に紹介しています。
  • 松本宣郎、前沢伸行、河原温編『文献解説 ヨーロッパの成立と発展』南窓社、2007年。[amazon]〜古代から中世までを一冊に収めている。
  • 長谷川岳男編『はじめて学ぶ西洋古代史』ミネルヴァ書房、2022年。[amazon]〜ギリシア・ローマ史に関する主要な時代・テーマを14の章でわかりやすく解説している。
  • 金澤周作・藤井崇他編『論点・西洋史』ミネルヴァ書房、2020年。[出版社HP]〜網羅的ではありませんが、古代ギリシア史を含む西洋史学のオーソドックスな論点について関係に紹介されている。

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    トピック

    考古学、先史時代

  • 岡田泰介『世界史リブレット 東地中海世界のなかの古代ギリシア』山川出版社、2008年。[amazon]〜初期ギリシアの東地中海における交流を記した、手に取りやすい書物。
  • 周藤芳幸、澤田典子『古代ギリシア遺跡事典』東京堂出版、2004年。[amazon]〜古代ギリシアの遺跡を紹介。マイナーな遺跡まで。
  • 周藤芳幸『世界の考古学 3 ギリシアの考古学』同成社、1997年。[amazon]〜やや専門に立ち入った議論も。
  • 周藤芳幸『諸文明の起源 7 古代ギリシア 地中海への展開』京都大学学術出版会、2006年。[amazon]〜入門よりも少し専門まで立ち入り、ヘレニズム時代まで幅広く扱う。
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    オリンピック・スポーツ

  • 桜井万里子・橋場弦編『岩波新書 古代オリンピック』岩波書店、2004年。 [amazon]
  • 橋場弦・村田奈々子編『学問としてのオリンピック』山川出版社、2016年。 [amazon]
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    軍事、戦争、外交

  • ハリー・サイドボトム(吉村忠典、澤田典子訳)『1冊でわかる ギリシャ・ローマの戦争』岩波書店、2006年。[amazon]〜戦争、戦闘のあり方、捉え方に同時代の文化、心性を見る。
  • ヴィクター・デイヴィス・ハンセン(遠藤利国訳)『図説 古代ギリシアの戦い』東洋書林、2003年。[amazon]
  • 中井義明『古代ギリシア史における帝国と都市―ペルシア・アテナイ・スパルタ』ミネルヴァ書房、2005年。[amazon]
  • 高畠純夫『ペロポネソス戦争』東洋大学出版会、2015年。[amazon]
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    歴史家、歴史叙述

    これは何より、それぞれの史書を繙いてほしいところです。冒頭、もしくは巻末に専門家の解説もついています。
  • 桜井万里子『historia ヘロドトスとトゥキュディデス―歴史学の始まり』山川出版社、2006年。[amazon]
  • 中務哲郎『書物誕生 あたらしい古典入門 ヘロドトス『歴史』――世界の均衡を描く』岩波書店、2010年。[amazon]
  • 藤縄謙三『ヘロドトス(新装改訂版)』魁星出版、2006年。〜1989年に出版されたものの再版。
  • 小池登・佐藤昇・木原志乃編『『英雄伝』の挑戦: 新たなプルタルコス像に迫る』京都大学学術出版会、2019年。[amazon]学術専門書。ローマ帝政前期の作家プルタルコスの『英雄伝』について多角的に分析。
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    アテナイ民主政

  • 伊藤貞夫『古典期アテネの政治と社会』東京大学出版会、1982年。〜古典期アテナイの政治ばかりではなく、社会や経済をも扱う入門書。
  • 澤田典子『講談社選書メチエ アテネ民主政 命をかけた八人の政治家』2010年。[amazon]〜有名な政治家に注目して、民主政の展開を追いかける入門書。
  • 澤田典子『アテネ 最期の輝き』岩波書店、2008年。[amazon]〜入門よりももう一歩踏み込んでいます。
  • 橋場弦『古代ギリシアの民主政』岩波新書、2022年。[amazon]〜古典期アテナイを中心に古代ギリシアの民主政の仕組み、制度について、最新の研究動向を踏まえ、分かり易く解説。
  • 橋場弦『丘のうえの民主政ー古代アテネの実験』東京大学出版会、1997年。=『民主主義の源流 古代アテネの実験」講談社学術文庫、2016年[amazon]〜古典期アテナイの民主政の仕組み、制度について分かり易く解説。
  • 橋場弦『アテナイ公職者弾劾制度制度の研究』東京大学出版会、1993年。〜学術専門書。民主政下に成立した公職者の不正を追及する制度の研究。
  • 佐藤昇『山川歴史モノグラフ 民主政アテナイの賄賂言説 』山川出版社、2008年。[amazon]〜学術専門書。民主政下のアテナイに飛び交う「賄賂」をめぐる言説から、当時の権力観を探る。
  • *佐藤昇編、神戸大学文学部史学講座著『歴史の見方・考え方 大学で学ぶ「考える歴史」』山川出版社、2018年。[amazon]〜第1章が民主政下での法廷への参加について議論しています。
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    女性・ジェンダー・セクシュアリティ

  • 桜井万里子『古代ギリシアの女たち―アテナイの現実と夢』中公文庫、2010年。[amazon]〜1992年に出版された中公新書の文庫版。
  • デイヴィッド・M. ハルプリン(石塚浩司訳)『同性愛の百年』法政大学出版局、1995年。[amazon]
  • ケネス・J. ドーヴァー(中務哲郎、下田立行訳)『古代ギリシアの同性愛(新版)』青土社、2007年。[amazon]〜この分野の古典。初訳出版が1987年(リブロポート)、原著は1978年。
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    経済、社会

  • 木曽明子『弁論の世紀:古代ギリシアのもう一つの戦場』京都大学学術出版会、2022年。[amazon]〜法廷で演説された弁論を手掛かりに、紀元前4世紀後半のアテナイ社会の様子、生活のリアリティに迫るとともに政治情勢についても叙述。
  • 桜井万里子『歴史のフロンティア ソクラテスの隣人たち―アテナイにおける市民と非市民』山川出版社、1997年。[amazon]〜「非市民」と市民に注目し、前5世紀末のアテナイ社会を描く。
  • 前沢伸之『世界史リブレット ポリス社会に生きる』山川出版社、1998年。[amazon]〜銀行業にかかわる人々からアテナイ社会を見る。
  • 伊藤貞夫『古典期のポリス社会』岩波書店、1981年。〜社会経済史に関する学術専門書。
  • 伊藤正『ギリシア古代の土地事情』多賀出版、1999年。
  • 〜学術専門書。土地制度について様々な観点から検討している。
  • ピーター・ガーンジィ(松本宣郎、坂本浩訳)『古代ギリシア・ローマの飢饉と穀物供給』白水社、1998年。[amazon]〜穀物の供給という側面から古代世界を分析した専門書。
  • 高畠純夫『世界史リブレット人 古代ギリシアの思想家たち―知の伝統と闘争』山川出版社、2014年[amazon]
  • 高畠純夫・齋藤貴弘・竹内一博『図説 古代ギリシアの暮らし(ふくろうの本/世界の歴史)』河出書房新社[amazon]〜数多くの図版を用いて古代ギリシア人の生活を多角的に紹介。
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    宗教

  • ヴァルター・ブルケルト(前野佳彦訳)『ホモ・ネカーンス』法政大学出版局、2008年。[amazon]〜動物犠牲について考察。原著は1972年。
  • ジョン・D. マイケルソン(箕浦恵了訳)『古典期アテナイ民衆の宗教』法政大学出版局、2004年。[amazon]〜アテナイの宗教に関する入門的な本。原著は1983年出版。
  • ロバート・ガーランド(高木正朗、永都軍三訳)『古代ギリシア人と死』晃洋書房、2008年。[amazon]〜ギリシア人の死,埋葬について。原著は1985年。
  • 桜井万里子『古代ギリシア社会史研究―宗教・女性・他者』岩波書店、1996年。[amazon]〜学術専門書。宗教以外にも女性、社会史を扱う
  • 浦野聡編『古代地中海の聖域と社会』勉誠出版、2017年。[amazon]〜専門学術論文集。古代ギリシア・ローマ世界のさまざま聖域に関する諸研究を収録。
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    アレクサンドロス大王・ヘレニズム時代

  • 澤田典子『よみがえる天才4アレクサンドロス大王 』ちくまプリマー新書、2020年。[amazon]〜アレクサンドロス大王の実像と後代のイメージについての、手軽な入門書。
  • 澤田典子『山川世界史リブレット人5 アレクサンドロス大王』山川出版社、2013年。[amazon]〜上記と同じく、アレクサンドロス大王の実像と後代のイメージについての、手軽な入門書。
  • 森谷公俊『興亡の世界史 01 アレクサンドロスの征服と神話』講談社、2007年。[amazon]〜歴史研究の成果を反映した、比較的詳しいアレクサンドロス入門書。文献案内も充実。
  • ヒュー・ボーデン(佐藤昇訳)『アレクサンドロス大王』刀水書房、2019年。[amazon]〜アレクサンドロス大王に関する入門書だが、歴史史料をどのように読み取るべきか、思考の様子を明らかにしている。
  • F .W ウォールバンク(小河陽訳)『ヘレニズム世界』教文館、1988年。〜ヘレニズム時代の概説書。原著は1981年刊。
  • 南川高志、藤井崇、宮嵜麻子他『歴史の転換期1 B.C.220年 帝国と世界史の誕生』山川出版社、2018年。[出版社HP]〜後期ヘレニズム世界と拡大するローマとのせめぎ合いの時代を概観した作品(古代中国の章も含まれている)。
  • フランソワ・シャムー(桐村泰次訳)『ヘレニズム文明』論創社、2011年。[amazon]〜ヘレニズム時代の概説書。
  • 大戸千之『ヘレニズムとオリエント―歴史のなかの文化変容』ミネルヴァ書房、1993年。〜セレウコス朝に関する学術専門書。
  • 周藤芳幸『ナイル世界のヘレニズム−エジプトとギリシアの遭遇』名古屋大学出版会、2014年。 [amazon]〜ヘレニズム時代のエジプトに関する学術専門書。
  • 波部雄一郎『プトレマイオス王国と東地中海世界: ヘレニズム王権とディオニュシズム』関西学院大学出版会、2014年。 [amazon]〜ヘレニズム時代のエジプトに関する学術専門書。
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