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　ミホール・オシール著、梨本 邦直編集、京都アイルランド語研究会（菱川　英一他）翻訳。
　アイルランド西部地方のアイルランド語方言（初級〜中級）をこれ一冊でマスターできる独習書。現代アイルランド語の文法・発音について最も体系的な記述を備える。全416ページ。ネイティヴによる発音を収録した CD 附き（MP3 フォーマット）。研究社のウェブサイトには アイルランド語質問箱 あり。
　目次は次の通り（抜粋）。太字は日本語版独自の内容。

• アイルランド語に特有の文法用語
• 固有名詞のカタカナ表記について
• アイルランド語の音
• アイルランド語概説
• 軟音化　固有名詞の属格
• IS（同定用法）　基数（1-10）
• IS（分類用法）　命令形　数詞の諸用法
• AG＋動名詞　DO＋所有形容詞＋動名詞　人数（1-10人）
• IS（関係節）　前置詞LE　IS ... LE　方向の副詞＋LE
• 定冠詞＋属格　動名詞＋属格　前置詞句＋属格　基数（20-100）
• 過去形　前置詞I
• 接続法　DIABHAL / DHEAMHAN　動詞の特別な反復形　名字
• 綴りと発音
• 本書の綴りと標準アイルランド語
• 前置詞的代名詞一覧
• コピュラ文の構造
• 不規則動詞方言差一覧
• 規則動詞活用語尾一覧
• アイルランド語 ― 日本語　語彙集
• 日本語 ― アイルランド語　語彙集（作文問題用）

　京都アイルランド語研究会（菱川　英一他）著。
　アイルランドの言語・歴史・文学に関する論考を8本収め、言語と文学についての詳細な序文および索引を附したもの。全221ページ。論考で扱った詩歌の一部を収録した CD 附き。
　収録論考は次の通り。

1. 疋田 隆康「アイルランドにおける古典の伝承とケルト・イメージ」
2. 梨本 邦直「VSO 言語とコピュラ文の構造」
3. 中村 千衛「形容詞述語文におけるコピュラと存在動詞の動詞交替」（研究ノート）
4. 菱川 英一「詩における句の考察―アイルランド語の4強勢詩行―」
5. 荒木 孝子「ローシーン・ドゥヴとカーチリーン・ニウァラホーィン―アレゴリカルな二つの詩とマンガンの翻訳詩」
6. 谷川 冬二「1798年蜂起―W. B. イェイツのケルト論の背景―」
7. 春木 孝子「モーィラ・ヴァッカンツィーの哀歌にみる伝統の継承と発展」
8. 池田 寛子「フィヌーラの声―アイルランドを越える『リアの子どもたちの悲劇』―」

　シャーウィン・Ｂ・ヌーランド著、菱川　英一訳、布施　英利（巻末エッセイ）。ペンギン評伝双書の一。
　原著： Sherwin B. Nuland: Leonardo da Vinci (Penguin Lives, New York: Penguin Group, 2000)
　原著者はイェール大学臨床外科学教授。解剖学者レオナルドがいかに時代に先んじた独創的な業績を残したかを最後の二章で怒涛のように語る。そこまでは通常の評伝のように見えるが、この最後の二章を読む人は、それまでのレオナルド像を根本的に修正するよう迫られるかもしれない。よく知られているレオナルドの絵画作品まで違ったように見えてくるかもしれない。
　科学的世界観に裏打ちされた思索家であり芸術家、いや、はっきり言えばレオナルドは科学者そのものだ。科学者がものを考え、目に映ったものを芸術的手段で表現したのだ。しかも、その目たるや、感度が尋常ではない。ミルク・クラウン（ミルクに雫をたらしたときに高速度撮影すると見える冠状の撥ね、milk splash）が裸眼で見えたほどの視覚を有する彼は、われわれに見えないものが見えていたとしても不思議ではない。

書評
　「ユニークな伝記シリーズ「ペンギン評伝双書」の一冊だが、著者がイェール大の外科医学教授ということからも、このダ・ヴィンチ伝の異色ぶりが窺えよう。
　美貌と優しさを兼ね備えて人々から慕われた若きレオナルドは、フィレンツェのヴェロッキオの工房に弟子入りし、瞬く間に名を上げてミラノの摂政ルドヴィーコ・スフォルツァに抱えられる。その後、後輩ミケランジェロと対立しながら、フィレンツェ、ミラノ、ローマで仕事をし、最後はフランソワ１世の庇護のもとフランス中部の城で一生を終える。だが本書で最も詳しく語られるのは、画家としてのダ・ヴィンチではなく科学者、とりわけ解剖学医としての彼である。
　正式な教育など何一つ受けなかった彼は、それ故に時代の制約から自由であった。残されたスケッチからわかるその解剖学の知識は時代に遥かに先んじており、彼が人間と自然をありのままに見ることに強い情熱を傾けていたことを物語る。」（「Tempo Books」、週刊新潮、2003年10月2日号）

　「エール」第22号（日本アイルランド協会学術研究部、2002）
Éire, No. 22 (Department of Irish Studies, Japan-Ireland Society, 2002)
ABSTRACT:
Joseph Szövérffy's letter quoted in Tomás de Bhaldraithe's article 'Seacht Sólás na Maighdine' (1964) was arguably seminal in the history of the studies of traditional religious songs of Ireland. The present paper aims to verify Szövérffy's points in his context and in a broader context, which includes the Middle English literature and the early Christian writings.
Szövérffy, based on the hymnological studies of Meersseman, points out that this Irish sacred song, which can be classified as a numeral carol of the non-liturgical nature, belongs to the long tradition of Grußhymnus that goes back to the seventh-century Byzantine hymn called Akathistos by way of Gaude hymns in Latin. The present paper shows that the tradition goes further back to the first-century gospel according to St Luke and beyond. The interesting characteristic of this kind of religious discourse is that whenever it is sung or recited as a prayer it invokes an unbroken chain that connects people to the sacred past.

　Studies in English Literature English Number 46 (2005) （日本英文学会）
　Excerpts

　「倫理創成講座 ニューズレター」第2号（2004年3月）
　全文

　日本エズラ・パウンド協会第25回全国大会（2003年11月1日午後1時-6時、神戸女学院大学）でのシンポジウムのパネリスト。
　会場：西宮市岡田山4-1 神戸女学院大学ジュリアード・ダドレー館（JD 館）1階大会議室（阪急神戸線西宮北口で宝塚線乗換え、門戸厄神下車、歩10分または西宮北口からタクシー5分。交通アクセスはこちらも参照）
　シンポジウム（15.40-17.40） 発表要旨
　パウンドとアイルランドとの接点は9世紀の哲学者エリウゲナに始まり20世紀の政治家フィッツ・ジェラルドに至るまで多様であり、新プラトン主義から現代社会の改革に至るまで様々の影響をパウンドに与えている。
　こうした直接的接点には起因しないが、パウンドと例えば現代アイルランド語詩人ヌーァラ・ニ・ゴーナルとの間にはある重要な共通点が見出せる。彼らが根本においてオーラル・ポエットであるということだ。彼らは声を重視する。文字はあくまで声に奉仕するものとしてある。
　これは単純な事柄のように見えるが、新プラトン主義等の神秘主義が淵源と仰ぐヨハネ伝冒頭についてのエリウゲナの思索も、実は声の重要性に関係がある。父なる神がみ言葉たる子を発出する際に声であるスピリトゥスを用いることをエリウゲナは重視する。近現代の思惟は新プラトン主義の光の発出に「目」を奪われがちであるが、こうした思索＝詩作方法は忘れてはならない。