問題とされる聖書テクスト(聖書学者・文学研究者が取り上げるもの)について、精密な議論のために必要な場合は、その原典レベル(ヘブライ語・ギリシア語)まで掘り下げて研究するのがこの研究の一つの特色である。もう一つの特色は、聖書テクストのうち、特に詩文学とみなされるものの範囲を、本来必要な範囲まで取るということである。具体的には、「旧約続編(第二正典)」をきちんと視野に収めるということである。第二正典中に含まれる知恵文学に、詩文学の研究にとってきわめて示唆に富むテクストが含まれているからである。
日本の研究状況の中では、この研究は、基礎研究の従来の欠を補い強化する役割を果たすものと考えられる。世界の研究状況の中では、二つの特色(原典レベル・第二正典)を生かして、精密であり、かつ、バランスのとれた研究方向を示す役割を負うことができるのではないかと考えられる。