
松本俊吉
テーマ「進化論と哲学」
この講義では、進化論をめぐる概念的な問題群の考察を通じ、生物学上の問題や論争の解決に科学哲学的思考がいかに貢献しうるかを考える
進化生物学は科学であるから、その問題の解決には、まずは何より経験的・実証的なアプローチが必要とされる。けれども同時に、それらの中には、単に実証的な知見やデータの蓄積のみによっては決着のつかない、優れて概念的・哲学的な分析を要求するものが多々存在することも事実である。たとえば、これまで生物学の歴史を活気づけ彩ってきた重要な論争の中には、〈対象レベル〉における実質的な主張の対立に起因するというよりも、論争の当事者たちが拠って立っている〈メタレベル〉の方法論や自然観――すなわちパラダイム――の不一致に由来するものも多々ある。科学哲学的思考は、こうした問題に最終的な解決をもたらすものではないが、問題や論争の前提を冷静かつ批判的な吟味によってあぶり出すことによって、混迷する議論の〈解剖学〉となることが期待される。この授業では、@進化論的説明とは何か、A適応主義論争、B人間行動・心理・文化の進化論的説明(社会生物学と進化心理学)、C進化論と倫理、D進化論と創造論、といった話題を取り上げながら、「科学と哲学の実りあるインターフェイスはいかにして可能か」といった、科学哲学のレゾンデートルにかかわる問題に肉薄していく。
生物学の哲学は、これからますますエキサイティングになっていく文理融合的な分野です。クリスマスの時期と重なって大変ではありますが、興味と知的意欲のある学生さんの参加を歓迎します。
進化論、生物学の哲学、自然選択、適応主義、社会生物学、進化心理学、倫理、創造論
竹山重光
道徳哲学の基本文献であるカントの『実践理性批判』(Kritik der praktischen Vernunft)をドイツ語原典で読む。カント道徳哲学について基本的な事項の理解を目指し、ひいては、道徳哲学一般についての理解を涵養する。
一回めの授業では、最初、『実践理性批判』という著作そのものの簡単な解説、序言(Vorrede)ならびに序論(Einleitung)の簡単な解説をしたあと、『実践理性批判』の第一部「純粋実践理性の分析論」の§1から読みはじめる。2回め以降、順にじっくりと読み進める。
Felix Meiner Verlagから出版されているPhilosophische Bibliothek 38もしくは506のKritik der praktischen Vernunftを底本とする。
竹山重光
カント道徳哲学の主要テキストをドイツ語原文で読み、思想の展開と実質に直接触れることを目指す。
短期間であるので、読むテキストは限定されざるをえない。同時に、アンソロジー的なもの(あるいは拾読み)にするわけにもいかない。そこで『基礎付け』(Grundlegung der Metaphysik der Sitten)の第1章を最初に読むことにする。そのあと、進度などを懸案しつつ読むテキストを選定するが、今のところ、『実践理性批判』(Kritik der praktischen Vernunft)の「分析論」を予定している。
重要なのは翻訳を作ることではなく、読むこと。概念のつながりや議論の展開を見きわめることに注力してほしい。
Philosophische Bibliothekの新版を標準とするが、それ以外の版でもかまわない。各自用意すること。
高橋雅人
ソクラテスとプラトンにおける正義概念について考察し、それによってわれわれの正義についての理解を深めることを目指す。
第1回:ガイダンス
第2〜4回:『ソクラテスの弁明』や『クリトン』を手がかりに、ソクラテスが正義についてどのように考えていたかを考察する
第5回以降:『国家』を中心にプラトンが正義についてどのように考えているかを考察する
使用しない
講義中に適宜指示する。
田中伸司
プラトン対話篇の倫理学的考察
各日の講義は次のトピックを中心に進めます。なお、その日に取り上げる主要なテクストを付記しておきます。
1日目)個別的で、普遍的な探求『ラケス』篇
2日目)対話の倫理性と真理『ゴルギアス』篇
3日目)徳は教えられるのか『メノン』篇・『国家』篇
4日目)正義と報酬『国家』篇
最終日)まとめと試験
学生のみなさんからの質問・発言を歓迎します。知識を学ぶことは倫理学の眼目ではありません。じぶんで考えて、どんどん意見を述べてください。
講義のテキストはとくには定めません。レジュメを配布する予定です。
大橋容一郎
カント哲学の構造と射程の解明
上記授業概要を当初は予定しているが、カントないし超越論的哲学に関する研究課題を持つ学生がいる場合には、当該研究課題に関する問題を適宜取り上げたい。
カント『純粋理性批判』、『人倫の形而上学の基礎付け』、『実践理性批判』
松田毅ほか
テーマ:人文学における「ロゴス(ことば)」
人文学研究において、「ロゴス(ことば)」は、「言葉」「論理」「理性」「合理性」といった多様な意味合いを含むものとして、古来よりこんにちにいたるまで洋の東西を問わず中核的な概念であり続けている。本授業では、この概念の多層的な奥行きをさざまな専門分野の文脈から多角的に解き明かしていくと同時に、人文学研究においてこれら一連の含意が「なぜ」「どのように」「どれだけの仕方で」必要とされるのかを受講者が自ら体感して行くことをめざす。それにより、本研究科博士前期課程学生--ヨーロッパを研究対象とする者のみならず、西洋文化との異同を見据えつつ俯瞰的に日本・東洋研究に携わろうとする者、さらにはことばによる探究(つまり学問的探究)を行うあらゆる者--が、それぞれの人文学研究を適切に進めるうえで必要となる基盤的「古典力」を身につけてもらう。
上記テーマを包括的キーワードとしつつ、文学、言語学、哲学、芸術の関連各分野の教員により、基本的にはオムニバス形式で講義を行う。4日間の集中講義での開講となる。各日ごとに、以下のような個別テーマを設ける。
セッション1(1日目):「ロゴスの礎」
セッション2(2日目):「言語としてのロゴス」
セッション3(3日目):「理(ことわり)としてのロゴス」
セッション4(4日目):「ロゴスの可能性と限界」
なお、各日ごとに教員、受講者、さらには関連古典ゼミナール参加者をも絡めた形での、質疑・討議時間を可能な限り設ける予定である。また、各講義の詳細については、後日、ポスターや掲示などで告知する。
上記の通り、討議時間を随時設ける予定なので、履修者は、自らの専門領域に捕われない仕方での活発な議論参与が望まれる。
なし
参考書・参考資料等は適宜授業中に指示する。
松山壽一
集中・2単位
シェリングの芸術哲学の基本概念を同一哲学および初期の思想展開との関連から理解すること
シェリングの芸術哲学とはどのようなものであったか。本講義は、この問題を、彼自身の神話論や自然哲学あるいはカント美学やロマン派芸術論との類似と相違およびシェリング自身の同一哲学をも顧慮しながら講ずるものである。またシェリングの芸術哲学は諸々のジャンル(音楽、絵画、造形芸術、詩文芸)に属する作品論を含んでいる。そこでの彼の見解、趣味をわれわれ自身のそれと比較することも興味をそそるテーマゆえ、とりあえずは講義を行う私のそれと比較してみる。
講義への出席と講義後のレポート提出(テーマ:シェリングの芸術哲学について)
他学部等、すべての学生が受講可能
西洋哲学、ドイツ哲学、さらには古代ギリシアの文芸(叙事詩、悲劇等)や芸術(彫刻)や近現代の芸術(音楽、絵画、演劇等)に関心のある学生の聴講を歓迎します。
使用せず(折々に資料を配付する)
ポール ジョバン
集中・2単位
産業病研究への招待。日本とアジアにおける公害・環境問題の過去と現在について、現地調査を踏まえた、一フランス社会学者の観点からお話しします。
「公害の原点・水俣病」との出会い。外国人研究者として学んだ「水俣学」や日本の環境社会学のこと。産業病=公害(産業性環境汚染) + 労災職業病の観点から水俣病問題、日仏両社会の職業・環境がんの現状、そしてアジアにおける産業廃棄物の問題などを論じます。特に科学研究の社会的責任と産業病の社会的不可視性の問題に注目します。
平常点(授業に参加し、議論に加わること)が35%、レポートの作成が65%で評価します。
この授業は『環境人文学講義U』としても開講されます。
火曜日午後15時から16時まで。内線5502(松田が対応します)。
授業は日本語で行われます。環境倫理や環境社会学をはじめとした環境問題に関心のある学生、医療倫理学や医療社会学に関心のある学生、アジアと世界のこの問題に関する比較研究に関心のある学生などに受講を勧めます。
一番上のファイル「Paul_JOBIN.zip」は、授業資料を全てまとめたものです。圧縮ファイルですので、解凍してからお使い下さい。
| ファイル名 | 内容 |
|---|---|
| Paul_JOBIN.zip | 以下の10ファイルをまとめたもの |
| CardisBMJ2005.pdf | Risk of cancer after low doses of ionising radiation: retrospective cohort study in 15 country |
| CNIC_la_Hague.pdf | マイケル・シュナイダーさんを囲んでーラ・アーグ再処理工場最新情報 |
| Genpatsu_Roudousya_Kikitori.pdf | 福島県富岡町、ハッピ荘にて、6月13日、福島第二原発の第三基の定期点検中、あるポンプ修理検査の指導員聞き取り |
| Genpatsu_no_Anzenron.pdf | 原子力発電所の安全論−フランス・日本・台湾の原発労働者の経験から考える− |
| Shrader-Frechette.pdf | Kristin Shrader-Frechette, "Trimming Exposure Data, Putting Radiation Workers at Risk: Improving Disclosure and Consent Through a National Radiation Dose-Registry" |
| Spira01.pdf | The incidence of childhood leukaemia around the La Hague nuclear waste reprocessing plant (France): a survey for the years 1978-1998 |
| ThebaudMony-PrefaceEnglishEd.pdf | Annie THEBAUD-MONY, "Preface to the English Edition (2007)" |
| TOYOTA_karoshi.pdf | トヨタ社員の過労死に関する資料 |
| TOYOTA_karoshi_ZEN-EI_2008Apr.pdf | 《特集》過労死をうむトヨタの異常 (『前衛』2008年4月号) |
| Viel-BMJ.pdf | ヴィエル教授の英医学雑誌BMJ事件 |
これ以外に必要な資料などは授業時間内に配布します。
授業時間中に指示する。
柘植尚則(慶應義塾大学)
集中・2単位
イギリスの道徳理論
奥野満里子
集中・2単位
文学部学生に限る・文学部1年生履修可
R.M.ヘアの分析哲学と規範倫理学
現代最も活動的な倫理学者ピーター・シンガーにも強い影響を与えたR.M.ヘアの道徳哲学を手がかりに、倫理的に考え、議論するとはどのようなことかについて探求する。私たちが倫理問題を考えるとき普通につかっている二種類の思考方法(二層理論)、「善い」「べき」「正しい」といった言葉の意味についての分析(メタ倫理学)、何をなすべきかを批判的に考え決断するための理論(規範倫理学説)としての現代功利主義など、現代倫理学に必要な基礎知識も同時に身につける。
出席率40%、学期末レポート60%
川本隆史(東京大学)
集中・2単位
文学部学生に限る
ケアの社会倫理学へむかって
心理学者キャロル・ギリガンが話題作『もうひとつの声』(1982 年)で「正義の倫理」と対置した「ケアの倫理」 。これは「すべての人が他人から応えられ仲間に入れてもらえ、一人ぼっちで置き去りにされ傷つけられるような人はいない」状態を理想とするもので、葛藤状態にある複数の責任と人間関係のネットワークを重視し、「文脈を踏まえた物語的な思考様式」によって目前の苦しみの緩和を図ろうとする。
本講義では、ギリガンの問題提起を受けて始まった「正義vsケア」論争を手がかりにしながら、両者の統合を心理的な成熟目標に定めるのではなく、正義を「正しい・まともな」という形容詞に差し戻すことによって、「まともなケア」あるいは「ケアの正しい分かち合い」をサポートする諸制度を構想する理路を探りたいと思う。可能な限り、日本の医療、教育、福祉の諸制度の検討も織り込むつもりである。
なおテキストに用いる編著への反響や批判に対しても、適宜応答を試みたい。
出席、発言、レポートにより総合評価する
小林道夫
集中・2単位
文学部学生に限る・文学部1回生履修可
デカルト哲学の体系を以下の要領で論じる。
レポート
岩崎豪人
後期火曜3時限・2単位
全学部学生履修可
論理的思考の基礎として、クリティカル・シンキングを取り上げる。論理性とは何か。日常的な議論や、論文の論理性を判断するにはどうしたらよいのか。どうすれば論理的に考え、論理的な文章を書けるようになるのか。様々な練習問題を解きながら、論理性の本質を考える。
毎回の小レポートとテストによって総合的に評価を行う。
アレク・フィッシャー『クリティカル・シンキング入門』ナカニシヤ出版
國方栄二
後期金曜5時限・2単位
全学部学生履修可
古代哲学における認識論の諸問題。プラトン『テアイテトス』を手がかりにして、認識論にまつわるさまざまな問題について論じる。
平常点
プラトン『テアイテトス』(田中美知太郎訳、岩波文庫)
植村恒一郎
集中・2単位
全学部学生履修可・文学部1年生履修可
テーマ:自我と時間
時間は哲学のすべての問題と深く結びついている。西洋哲学史における重要な時間論のトピックを学びながら、現代の時間論の話題にも眼を向ける。
出席と、授業の最後に書いてもらう小レポートによる。
植村恒一郎『時間の本性』(勁草書房)
伊勢田哲治
集中・2単位
文学部生に限る・文学部1年生履修可
科学哲学の近年の動きとして、机上の空論を嫌い、科学の営みに関する正確な理解を哲学的問題設定と結び付ける動きが進んでいる。その中でも、科学者共同体の仕組みが科学の合理性にどういう役割を果たしているかを考える「社会認識論」と言う分野が注目を集めている。
本講義では、社会認識論の主な論者をとりあげて、科学社会学の知見が哲学的関心とどう結びつくか、社会認識論はどういう方法論に基づいて行われるべきか、と言った問題について考える。
最終回の授業における記述式試験またはレポート
伊勢田哲治『認識論を社会化する』名古屋大学出版会
高橋雅人
前期水曜2時限・2単位
文学部生に限る・文学部1年生履修可
古代ギリシア哲学における《徳》についての、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、の思索を論ずる。徳と知についての関連が主な主題となる。
学期末レポート
特に指定しないが、講義時間内に適宜、参考文献を紹介する。
高橋雅人
水曜2時限・2単位
古代ギリシア哲学史概説。主にソクラテス、プラトン、アリストテレスの三人に関して「<知>は人間の<魂>においてどのようなものとしてありうるのか」を中心的なテーマとして、ギリシア哲学の基礎的な文献を紹介しながら、論じる。
学期末レポート
上野 講師
集中・2単位
1670年、スピノザは『神学政治論』(TRACTATUS THEOLOGICO-POLITICUS)を世に問う。そのため彼は無神論者として断罪され、後に宗教批判の先方として祭り上げられることとなった。しかし話は単純でない。本書は聖書と敬虔を標榜していたのである。妥協か、策略か?このあたりの謎について考える。
最後の時間に記述試験を行う。
塩出 講師
後期火曜4時限・2単位
アリストテレス『ニコマコス倫理学』第7巻及び第10巻の快楽論のテキストの読解と分析を通して、アリストテレスの倫理学における快楽の意味を追求する。
平常点及びレポート
ARISTOTELES,ETHICA NICOMACHEA,ED. BY I.BYWATER,OXFORD CLASSICAL TEXT,OXFORD U.P.;ARISTOTEL,THE NICOMACHEAN ETHICS, TR. BY H.RACKHAM.THE LOBE CLASSICAL LIBRARY.
塩出 講師
前期火曜4時限・2単位
古代ギリシア倫理思想入門。古代ギリシアの倫理思想の展開を、プラトンとアリストテレスの倫理思想、特に彼ら二人の倫理的知識と行為の問題に焦点をあてて吟味・考察する。
レポート
花井 講師
集中・2単位
西洋哲学の黎明期、パルメニデスのエオン(=SEIENDES)の誘発した一連の問題群は近現代の哲学にあっても様々に姿形を変えて隠見し、その意味で今日なお惑星的意義を失わないとも言えるが、そうした問題群を考察しながら、そこに体系的表現を与えたトマス・アクィナスの思想への入門を試みる。世に煩瑣哲学と評されるスコラ学であるが、概念の死物化を避けるために煩瑣も厭わない努力もあることへの理解をまずは目指したい。
レポート
細川亮一
集中・2単位
ハイデガー哲学、特に『存在と時間』の意味と射程をギリシア哲学(プラトン、アリストテレス)から捉える。ウィトゲンシュタイン『論考』をも形而上学の視点から考察する。
レポート
細川亮一『ハイデガー入門』(ちくま新書)
須藤 講師
集中・2単位
ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェ(1844〜1900)の思想について、とくにアルトゥール・ショウペンハウアー(1788〜1860)の思想との異同に留意しながら、講述する。取り扱うテーマは「美」の問題、「哲学史」の鱈得方の問題など。
レポート
渡部 講師
集中・2単位
13世紀の思想家トマス・アクィナスの真理論を、人間存在の理論(知ること)や実践(行うこと)との関連から論述してゆく。時代背景にも留意し、(当時の)問題の要諦に注目しながら、その解決への姿を通して彼の哲学的な意味を探っていく。
レポート
齋藤了文
集中・2単位
テクノロジーの哲学と倫理
大事故や災害を起こす現代のテクノロジーという現象をどう捉えればいいのかという枠組みを提案する。キーワードは、複雑生と限定合理性である。それに基づいて、いわゆる工学倫理を考えていく。このとき重要となるのは、法的制度的枠組みである。(ビデオ等を使った授業を行う。)
レポート
齋藤了文『<ものづくりと複雑系>』講談社選書メチエ
神崎 講師
集中・2単位
「古くからの詩と哲学の争い」ということがいわれるが、実際のプラトンの「詩人追放論」に見られるように、真実を探求する哲学的営みと言葉によって虚構を刻みあげる文学とは相容れないものと考えられて来た。しかし、哲学者が文学作品を自らの思索の手がかりとしてきた点では、プラトンもその例外ではない。この講義では、「感情」という問題を取り上げて、文学作品、とりわけ「ギリシア悲劇」と哲学との関係を以下の要領で考察する。
野矢茂樹
集中・2単位
同一性と変化に関する問題を考察する。例えば台所においたトマトがだんだん腐っていく。それは「同じ」トマトでありながら、全く「同じ」ものではない。ここには矛盾がある。私自身はこの矛盾を解消し得ず、それゆえ同一性と変化は相容れない概念であるという結論に達した。その結論に至る考察を展開し、検討する。さらに、そうした議論を踏まえて、時間の問題、および人格の同一性の問題を論じる。
中釜 講師
集中・2単位
「時間」の概念には、哲学的な分析解明を必要とする幾つかの奇妙な性質がある。時間は、空間と同じく、出来事の間の関係を規定する一種の枠組みとして機能する。科学的に問題とされるのは、主に時間のこうした側面である。しかし時間は、単なる出来事の枠組みであるにとどまらず、それ自体が「流れる」、「進む」、「経過する」等の表現で表される動的な側面を持っているように見える。時間の持つこの側面が、古来哲学者を悩ませてきた様々なパラドクスや形而上学的問題を、生じさせてきたのである。
本講義では、主に時間の持つ「動的」側面に焦点をあて、宿命論の問題、ニューカムのパラドクス、過去と未来の区別、マクタガートのパラドクスなどについて論じる。
中才敏郎
集中・2単位
心とは何かという問いを通して、人間とは何かについて考える。心とは何かという問いは心理学の問いでもあれば哲学の問いでもある。哲学はこの問題に対してわれわれが心についてもっている様々な概念の分析を通じてアプローチする。感覚、思考、意図、行為、自我などの心的概念を分析することによって、心とは何かを明らかにすることが心の哲学の課題である。講義では、西洋哲学史を中心に、心の概念の発展をたどりつつ、現代の心の哲学における心身問題や行為論、自我の同一性などについて論じる。
中才敏郎『心と知識』(勁草書房)
中岡講師
集中・2単位
西洋近現代哲学における「欲望」の問題を論じる。ヘーゲル、ニーチェ、ラカンなどに関説する一方で、現代社会生活における様々なニード(欲求)とそれに対応するケアのあり方を考えてみたい。これを通して、哲学の知は、特殊な状況のただなかで特殊な解決を発明する試みとして再編されることになると見込まれる。糸口としては、「欲望」をめぐるヘーゲルの諸テクストを詳細に検討する。
土屋講師
集中・2単位
哲学の問題は、言語の問題として考えられる。なぜそう考えられるのかを簡単に説明する。さらに、二十世紀になって哲学の問題がどのような形で言語の問題として考えられてきたのかを解説する。取り上げる哲学者は、アリストテレス、フレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタイン、クリプキ、クワイン、タルスキなど。
谷 講師
集中・2単位
教父・中世哲学の伝統は、西洋の哲学と宗教の歴史にあって生と思索との大きな源泉をなすものであった。この講義においては、主としてアウグスティヌスやニュッサのグレゴリオスといった代表的教父の文脈を取り上げ、存在(=神の名)と善、そして自由、時間、自己、神の似像などについての基本的な問題を考察する。
門脇俊介
集中・2単位
「自然主義と反自然主義との果てしない戦い」という視点から、現代哲学を見直す講義。
などのテーマを扱う。
門脇俊介『現代哲学』(産業図書、1996年)
田村 講師
集中・2単位
ジョン・ロック(1632-1704)の『人間知性論』をデカルト(1596-1650)の哲学と対比しつつ、ロバート・ボイルやトマース・シドナムなどの実験的自然学者たちの考え方と結び付けて考察する。実験や観察を通じて得られる知識の特徴は何か、実験や観察は理論体系とどのように関わるのか、といった科学哲学の基本問題に関して17世紀の人々がどう考えていたのかを正確に捉え、その意義を検討していく。
松永講師
集中・2単位
知覚世界における徴、人が作り出す記号、それから言葉について論ずる。徴、記号、言葉と秩序の関係、およびそれらに特有な力を、時間の問題を考慮しつつ考察する。
左近司
集中・2単位
古代ギリシア・ローマ時代の哲学者が「神」あるいは「神的なもの」を何と考え、それに何を期待していたかを、時代を下りながら考えてみたい。「哲学者」と限定したところがいろいろな意味でポイントである。ただし、導入として、哲学者ではないが、ホメロース・ヘーシオドス、あるいはヘーロドトスも考える対象としてみたいとは思っている。現代の日本に住む私達に、神が必要なのかを考えるきっかけとなることを目指している。
松山壽一
集中・2単位
わが国の哲学研究も1世紀を経て最近ようやく自立したものになりつつある。本講義はこうした自立の研究の一つとしての概念史的研究を紹介する。本講義はこうした意図から力と物質の概念史のうち、ニュートンからカントに至るそれについて論じる。概念史的研究が自立した研究であることを示すために、本講義では件の概念史を講ずるに先だってまず、従来の哲学史に対して批判を加え、かつ新しいテクスト読解法――ポリフォニーとしてのテキスト読解法――を提示する。
松山壽一『ニュートンとカント』(晃洋書房)
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