ワークショップ「倫理を人に教えるということ」
- ワークショップを終えての内容補足(吉田報告)
情報倫理教育において、事例は欠かせない。抽象的な倫理理論を論じるだけでは、実践的な倫理はまったく身につかないからだ。ただし、「事例」と言っても、一般的な理論の個別事例としての事例instanceと、自分が直面する(しうる)具体的事象caseとしての事例の二種類が区別されるべきである。個別事例としての事例instanceは、倫理理論を解説する従来の倫理教育においても活用されていたと思われ、またそれはそれで必要なことである。しかし、筆者は以下のことを強調したい。caseとしての事例を用い、それを倫理的な文脈の下で観るという力を育てることが必要であろう。また、事例に関するディスカッションなどを通じて、他者の文脈を理解する経験もまた重要である。教条的な価値の挿入ではなく、caseとしての事例を用いた自らの価値文脈の発見と他者の価値文脈の理解こそが、現代の大学における倫理教育に求められていることであろう。