ワークショップ「倫理を人に教えるということ」
-
羽地亮(神戸大学大学院文化学研究科助教授)
「倫理」と「教育」というものは、内在的に関連しあった問題群を構成していて、そのことはしばしば指摘されるところですが、このワークショップでも倫理性ということを明らかにするうえで避けて通れない問題がいろいろと浮き彫りになったと思います。竹島さんのご報告からは、様々な教育スキルの導入によって倫理的想像力を喚起するということがポイントとして浮かび上がりましたが、それは倫理的問題が生じる以前の「予防倫理」とどうつなげるべきなのか、一概に「技術者倫理」といってもどのような技術者がどのように行為するべきかはまだ考察を進める必要があるのではないか、といった考えが浮かんできます。また、吉田さんのご報告では、抽象的に理論を教授する倫理教育ではなく、事例をベースにした具体的な倫理教育の必要性ということが強調されましたが、倫理性の「実感」ということが重要なことは十分に首肯できるとして、あえて倫理教育において「事例」というもののもっている哲学的なステイタスはいまだ不明瞭であるような気もいたします。いずれにせよ、一つの問いはさらなる問いを呼び、満足のいく解答のありかについては今後に委ねられたとは思いますが、刺激的な論点が報告者からも会場からも提起され有意義だったのではないかと思います。このワークショップに関わってくださったすべての皆さんにあつく御礼申し上げます。