西洋史学が研究対象とする西洋社会が19世紀に生み出した文化は世界の多くの地域に影響を与えました。日本も例外ではなく、明治以来西洋社会は学ぶべき対象とされ、その西洋社会の歴史学を学ぶ西洋史学には特別な地位が与えられていました。しかし今日一つの価値基準に合わせて世界が動かされる時代ではなくなっています。従って旧来の「西洋史学」は没落したわけですが、しかしそこから西洋史学の再生も始まります。「モデル」を対象とした西洋史研究では見えてこなかった様々な事象が世界史の中でよみがえります。時代の先端に立って、ともに西洋史学を切り開いていきませんか。
神戸大学文学部の西洋史学は専任教員が4名で、古代から現代までの時代をカヴァーしています。地域で見ると、フランス・イタリアやオーストリア・ハンガリーと中・南欧地域に研究のウェートが置かれており、この点が私たちの研究室の特徴と言えるでしょう。その分イギリス史やアメリカ史は手薄となっていますが、非常勤講師の応援を得て出来るだけ学生の関心に沿った教育研究指導を行うように努めています。
西洋史の授業は、基本的に4年間の学習で卒論の作成が可能となるよう、有機的に組み合わされています。1年次には史学概論や人文学基礎(西洋史)に参加して、大学で西洋史を学ぶための問題意識を育てます。2年次から洋書講読(英・仏・独)の演習に参加し、研究に必要な基礎学力を身につけます。特殊講義はそれぞれの教員が最先端の研究について講義するもので、現段階での研究の到達点を知ることができます。専任教員がカヴァーできない分野は非常勤の先生の応援で補っています。研究テーマが絞られてくる3年次からは卒論作成のための演習に参加し、大学院生のアドヴァイスや教員の研究指導を受けつつ研究を進めて4年次で卒論を完成させることになります。
| 大津留 厚 教授 | 西洋近現代史。中央ヨーロッパを中心に研究しています。 | 教員紹介 |
| 田 京比子 准教授 | 西洋中世史。中世イタリアを中心に研究しています。 | 教員紹介 |
| 小山 啓子 准教授 | 西洋近世史。フランスの王権と都市社会を中心に研究しています。 | 教員紹介 |
| 佐藤 昇 准教授 | 西洋古代史。古代ギリシア世界の歴史をさまざまな角度から研究しています。 | 教員紹介 |
「古代ローマとガリア人(ケルト人)との関係について」「西欧中世盛期の隠修士運動」「16世紀フランスにおける本造りの世界―印刷職人再考―」「19世紀ハンガリーのユダヤ人に見るハンガリー化」「ラップ・ミュージック―その誕生から1990年代初頭にいたるまでのアメリカ社会との相互関係―」
西洋史学の授業は狭い意味での職業教育ではなく、広い教養と歴史的なものの見方を身につけ健全な判断力を持つ市民の育成を目指しています。したがって卒業後の進路も多様で、民間企業、公務員、教師などさまざまな職種がありますが、中には海外で活躍するチャンスのある職業を選ぶ人もいます。大学院進学者は2〜3名で、少なくともその半数は博士前期課程修了後に公務員、民間企業などに就職していきます。
西洋史は西洋という「他者」の歴史を古代から現代まで研究する学問です。そこには「他者」の歴史ゆえの難しさは当然ありますが、現在の日本から「距離」がある分、それだけ思考の地平を広げてくれる分野といえるでしょう。また、今現在の欧米世界を理解するためにも過去へのまなざしは重要です。先人の研究蓄積を手がかりに外国語の文献・史料を読み解いて自らの見解を見いだす作業は大変ですが、それだけに達成感や喜びにも大きいものがあります。
(田京比子)
神戸大学文学部で私は史学科の専修のうちから一番自分の興味に合った西洋史を選択しました。西洋史専修では刺激的な授業を、時にはほぼマンツーマンで受けることができました。また、学生同士も2回生から大学院生まで仲良く勉強していました。ここでの4年間のゼミ・講義・合宿・飲み会・他愛のないおしゃべりを通して、高校までの生活では得られない、自分の理解力や創造力を鍛えられる経験ができたというだけでも、大学に、特に人文科学の世界に入る価値は計り知れないものがあります。
(雪村 加世子 2004年3月卒業 人文学研究科在学中)
私は、文学部とは好きな事を誰にも邪魔されずとことん探究できる学部だと思う。だから卒業した時の満足度と達成感はすごい。文学部は就職に有利ではないといわれるけど、今は学部名で評価される時代じゃない。むしろ、学生時代に自分が何に疑問を持ち、それをどのように解決してきたかが評価されると思う。環境や設備は十分整っています。後はやる気次第でどんどんできる。学生時代何かに没頭したい人にはお勧めの学部だと思います。
(冨田 大介 2001年3月卒業 2004年3月文学研究科修了 共同通信社勤務を経て文化学研究科在学中)
時に、権謀術数の化身とされる「君主論」の著者・マキャヴェリも、残した手紙や書簡を読み解くと、冷酷さよりも祖国を愛し、行く末を案じる人間らしさが顔をのぞかせます。史料から積み重ねた事実と自由な発想で、欧米世界に新たな光を当てられるのが西洋史学の魅力ではないでしょうか。授業で教えられた「歴史家に問われるのはモラルだ」という言葉を胸に、現在も新聞記者として、事実を追いかける日々を送っています。
(平野 和彦 2001年3月卒業 読売新聞社勤務)