日本史学は、現在「日本」と呼ばれている列島およびその周辺地域の歴史を研究することを目的とします。もちろん、より広く国際社会の中での「日本」の位置を歴史的に考えることも、研究の対象になります。歴史の研究といえば、過去の世界にひたすら埋没するように思われがちです。しかし、歴史を研究することは、何よりも私たちが生きる現代社会をより深く理解するということです。なぜならば、私たちが歴史に対して抱く興味や疑問は、今生きている私たちが抱えている問題と直結しているからです。また、過去の出来事を様々なデータ(文献史料、発掘成果、地理的条件、自然的条件等々)を駆使して復元し、その意味を時間軸に位置づけて問うことは、現在おこりつつある事象を理性的に理解することに直接役立ちます。歴史という「根っこ」を持たないものを想像することができますか? 何を知るにも、その第一歩は歴史から始まるといってもいいでしょう。江戸時代のある哲人は「学問は歴史に極まり候ことに候」と言い切りました。現代的な意味においてもこの発言は的を射ています。卒業論文を完成したとき、皆さんが社会を見る目が、大きく変わることを私たちは確信しています。
日本史専修の授業には二つの特色があります。第1は学年ごとに到達目標を定めた授業が充実していることです。1年次は、大学での歴史研究の基礎をゼミ形式で学びます。2年次には3年生と混成チームで史料を使ったレポート作成に挑み、日本史研究の基礎となる史料の扱い方を学びます。 3年次には4年生の卒業論文作成ゼミに参加し、自分が取り組むべき問題を絞り込んでいきます。これらの授業を通じて、同学年・先輩・後輩とともに学ぶ姿勢が自然に身につきます。第2の特色は、大学での研究と社会の接点について考えるプログラムが充実していることです。地域の古文書調査、博物館や文書館と共同での展示会の企画運営に携わるなど、社会との関わりを持ちながら、自分の研究を進めることができます。
| 奥村 弘 教授 | 日本近世近代史。日本において近代社会が形成されてくる論理に関心を持ち、地域史、国家史、社会史を研究しています。 | 教員紹介 |
| 市澤 哲 教授 | 日本中世史。とくに鎌倉・室町期の政治史。現在は中央政局と地域政治史の切り結びに注目して研究を進めています。また、軍記物や記録などの文献の分析にも興味を持っています。 | 教員紹介 |
| 河島 真 准教授 | 日本近代現代史。第1次世界大戦からいわゆる「戦間期」そして「戦中期」を経て戦後の国家が生成してくる様態を、政治史の観点から研究しています。 | 教員紹介 |
| 古市 晃 准教授 | 日本古代史。日本古代の国づくりの論理がどのように正統化されてきたのかについて、飛鳥時代を中心に考えています。古墳時代の王宮や陵墓の問題にも関心を広げつつあります。 | 教員紹介 |
「律令祭祀における八十島祭の位置づけ」「感応擾乱と室町幕府体制の転換」「室町期の日明外交に関する一考察―永享六年『明使対面之儀』にみる『日本国王』」「幕末維新期の大和国―豪農の政治社会認識」「大正期の地方鉄道敷設過程に見る地方政治」「近代日本における都市芸能興行について」「旧制中学校の受験競争をめぐる史的考察」
学部の卒業生の進路は、就職と大学院進学の大きく二つに分かれます。就職先は一般企業(金融関係、メーカー、マスコミ関係、教育関係など)や公務員など、他の学部と極端な差はありません。中学校・高等学校の教員や博物館学芸員、文書館に勤務するアーキビストなどの専門職を志望する学生の多くは、大学院博士課程(前期課程)に進学します。前期課程を終えて、一般企業に就職するケースも少なくありませんが、さらに専門性の高い職種を目指す学生は博士課程後期課程に進学します。
既成の学説やイメージを新しい視点から批判し、新たな歴史像を作り上げるのが大学の歴史学研究ですが、仲間との議論によって思いもよらなかった考え方にたどり着くことは少なくありません。私は神戸大学の日本史教室で、率直に相互批判できる仲間と学生生活をおくり、集団で切磋琢磨すれば、仲間とともに自分の道も開けることを身をもって体験しました。私の務めはこのよき雰囲気を絶やさないことだと思っています。
(市澤 哲)
高校の歴史の授業では、教科書に書かれた内容をとにかく覚えて頭に詰め込むことが何よりも大事でした。しかし大学で学ぶ歴史は、それとは全く異なるものです。既存の歴史像に常に疑問を投げかけ、新たな歴史像を組み立てることが一番大切な作業となります。それはとても難しく大変な作業です。しかし先生や先輩後輩、そして同学年の仲間たちと語りあい、耳を傾けあうことで、お互いの考えを切磋琢磨しながら新たな歴史像の構築に向けて一歩ずつ進んで行くことができるのだと思います。そして神戸大学文学部日本史学専修では、そうした切磋琢磨を可能にする関係が築かれています。この環境の中だからこそ、大学院に進学してからも伸び伸びと勉強を続けることができているのだと実感しています。
(吉原 大志 2007年3月卒業 人文学研究科在学中)
私が日本史学専修で得たものは「分析力」です。論文を書くためには、自分の言いたいことの論拠を積み上げて行く必要があります。その論拠となるものが、古文書や膨大な文献です。それらの情報を取捨選択する過程で、自然に「分析力」が身に着いたと思います。私は教科書を作る会社に入社しましたが、必要とされる力は同じでした。何年もかけて現場の先生方のニーズを集め、分析し、結果を反映させるのが教科書編集の仕事なのです。学校に通う児童・生徒は誰もが教科書を使います。要領を得ない教科書を作るわけにはいきません。日本史専修で得たこの力を生かして、日々教科書制作に奮闘しています。
(三角 菜緒 2008年3月卒業 東京書籍株式会社勤務)