国文学専修は、国文学、国文学近代、国語学の3分野からなり、古代から近現代にいたる各時代の日本語・日本文学についての研究を行なうところです。人は言葉によって思考し、あらゆる思想や、人生観や、喜怒哀楽などを文学に投影してきました。日本語・日本文学の歴史と現在を学ぶことは、日本人の精神がこれまで辿ってきた道と現在のあり方、そしてこれから進むべき行く先を追究することに他なりません。そのことを通して、自分の立つ位置について確かな目を持つことは、私たちに、揺るがぬ自信と判断力を与えてくれます。
また、日本語・日本文学の研究は今や日本だけのものではありません。国文学専修は、東アジア諸国、英、米、東欧など、様々な国から多くの留学生を受け入れています。国文学専修で学ぶことは、それぞれ異なる文化的背景を持ちながら、日本人の思想や文学に強い関心を持つ留学生と交流する日々でもあります。彼らは、私たち日本人が実はいかに日本を知らないか、ということに気づかせてくれるとともに、異なる立場から日本文化を見つめる視点も教えてくれます。国文学専修は、世界に開かれた目を持ち、世界に向けて日本文化を発信できる国際人を育てる場でもあるのです。
国文学専修には国文学(古典文学)、国文学近代(近世・近代文学)、国語学の各分野に2名ずつ、計6名の教員がおり、各教員とも特殊講義と演習の2種類の授業を担当しています。特殊講義では、各分野での最先端のトピックや各教員の研究内容などについて、時に学生との議論も交えながら講じます。演習は、ある作品や研究論文について学生が研究報告をし、その後、教員の助言のもと、学生同士で討論するという形が一般的です。それを通じて、互いに調査や論理構築などの研究能力を研鑽します。例えば、2009年度前期の演習題目は、「源氏物語研究」、「平家物語研究」、「近世和文研究」、「漱石文学研究」、「比喩研究」、「近世漢字研究史」です。
| 林原 純生 教授 | 明治十年代の近代文学成立期の文学史的状況。特に、政治小説、翻訳小説、新聞小説などを対象として、成立期の様相を考えています。 | 教員紹介 |
| 福長 進 教授 | 平安時代の物語。 特に『栄花物語』、『大鏡』等の歴史物語を研究の対象としています。 |
教員紹介 |
| 鈴木 義和 教授 | 日本語文法。 特に現代語、古典語の条件法・接続法を研究しています。 |
教員紹介 |
| 田中 康二 准教授 | 江戸時代の文学・思想。 とりわけ本居宣長を中心に国学を研究しています。 |
教員紹介 |
| 樋口 大祐 准教授 | 中世文学。『平家物語』等における、王権の外部をめぐる歴史叙述の諸問題、及び中・近世移行期の文学・思想について研究しています。 | 教員紹介 |
| 矢田 勉 准教授 | 日本語史。特に仮名表記史・変体漢文史を中心とする日本語文字・表記史および日本人の文字意識史・文字研究史を研究しています。 | 教員紹介 |
| 全 美星 講師 | 日本近代文学、日韓比較文学。 | 教員紹介 |
「『源氏物語』論―玉鬘と男踏歌をめぐって―」「室町時代物語における霊異譚について―木幡狐を例に―」「『雨月物語』の考察」「国木田独歩「春の鳥」―語り手の意識を読む―」「日本語の談話におけるフィラーの研究」「人称代名詞の研究」
卒業後は、試験を経て大学院人文学研究科博士課程前期課程に進み、より高度な研究を続ける学生と、就職する学生とに分かれます。就職先の業種は、中高の国語科教員、各種公務員、マスコミ(出版社・新聞社等)、金融機関、シンクタンク、運輸、その他さまざまです。大学院に進学した学生は、博士課程前期課程修了後、中高国語科教員、公務員、企業等に就職するほか、一部はさらに博士課程後期課程に進み、研究者、大学教員等になります。
どんな学問でもそうですが、国語学や国文学の研究には、他人の動向に動かされず、自分で考え、かつ感じるということが何よりも必要です。よい研究の多くは (一見無関係に見えるとしても)研究者個人の現実生活の中で芽生えた、実存的な要求に基づいているものです。その意味で、「今」をよく考え、よく生きたいと思っている全ての人々を、当専修は歓迎します。
(樋口 大祐)
思考の足がかりを見つける観察力、そこからオリジナルの輪を導く思考力と想像力、そしてそれを他者に伝えるための論理構成力。この専修で身に付くこれらの能力は、卒業後どんな進路を選んでも、必ず役に立つ、いわば社会人としての「基礎体力」のようなものです。皆さんが、この専修で、よく遊び大いに学び、足腰のしっかりとした人として、多彩な道にはばたかれることを願っています。
(大森 優子 2005年3月卒業 神戸新聞社勤務)
はじまりにあったのは、いつか読んだ『平家物語』の世界でした。どうしようもなく消えてゆく哀しみの先に、人間の思考の枠組みが仄見えるのではないかという予感。それを追究しようと国文学専修に進みました。実際に入って見ると、講義で知識が得られることはもちろん、ゼミは少人数で、教員・学部生・大学院生がひとつの教室である作品に対してお互いの意見を交わすことは大きな喜びでした。文学について、またことばについて、知れば知るほど新たな疑問が生まれ、今では大学院での研究にどっぷりつかっています。
(薮本勝治 2006年3月卒業 神戸大学大学院人文学研究科在籍中)
私が神戸大学の国文学専修に感じる最大の魅力は、人と人との距離が近いことです。少人数なので、ゼミでは教員と学部生、そして大学院生までが一つの教室に集い、一つの文学作品を精読し、お互いの意見を交わしていきます。国文学は綿密な資料の読解に基づいた実証的な学問であると共に、自らが問いを発し考察を深めていく自己省察の学問です。その意味で、教員や学生同士の意見交換の場は、自分の考えを時に思いもよらない方向へと発展させる可能性に満ちていると言えます。私も国文学専修での経験の中で、多くの知的な刺激を得ることが出来ました。
(天野 聡一 2004年3月卒業 神戸大学大学院文化学研究科在籍中)