―基層・動態・持続可能な発展―

Basic structure,Dynamics, and Sustainable Development

 

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2009年調査報告(韓国・東海市)

 2009年の調査期間中に、東海市の「千年鶴祭り」(2009年10月31日・三和洞武陵渓谷)を参与観察することができた。
 千年鶴祭りとは、2005年に武陵渓谷の鶴をイメージして考案した「千年鶴踊り」を東海市のシンボルとする祝祭である。東海文化院の高齢者学級(寿大学)の会員が中心となって、東海市独自の踊りとして「千年鶴踊り」を披露する祝祭である。1980年の合併によってスタートした東海市は、地域住民を統合するために、東海市独自の文化活動や市民活動を積極的に支援している。したがって、千年鶴祭りには東海市の多様な市民団体が関わっている。そのひとつが「白頭大幹保存会」である。
 ここでいう「白頭大幹」とは、韓国固有の山脈の地理体系を示すものである。 1990年代、白頭大幹地区での環境破壊をきっかけにして、特に市民団体による自然保護運動が展開されている。東海市武陵渓谷の界隈は白頭大幹の保護地区に属している。1994年に東海市を拠点として形成された自然保護団体が白頭大幹保存会である。白頭大幹保存会の主な活動は生態の森づくり、山参を植える活動、白頭大幹地域の掃除などである。白頭大幹保存会は、今回の千年鶴祭りに1)山参を植える体験イベントの実施、2)白頭大幹地域の写真展示という形で参加している。白頭大幹保存会の山参を植える体験イベントは1997年から開始されたものであるが、今年から千年鶴祭りに参加するようになった。白頭大幹保存会の会員は中年層の地元住民が多く、今回の千年鶴祭りにおいても中心的な役割を果たしている様子がうかがえる。白頭大幹保存会という市民団体が白頭大幹地区の保存のみならず、東海市の主力産業であった石灰石鉱産やセメント会社による環境破壊という地域問題にどのように向き合っているのかを把握することが必要である。白頭大幹保存会の事例は、地方社会の市民団体が地域再生のひとつの主体になりうるかどうかを考察する上で重要な手がかりを与えてくれるものと期待できる。


2009年「千年鶴祭り」の伝統公演


千年鶴踊り


千年鶴祭りに参加する白頭大幹保存会


千年鶴祭りの模様

魯 富子(天理大学)