―基層・動態・持続可能な発展―

Basic structure,Dynamics, and Sustainable Development

 

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2008年調査報告(韓国・東海市)

◇概説

 2008年度の調査は、地域社会の中心として住民自治センターを事例にして、東海市の地域社会を北部地区と南部地区に分けて、地域社会の現状と変容を検討する。
 ここでいう住民自治センターとは、地域住民に文化や福祉のサービスを提供する公共施設であり、その運営主体として住民自治委員会が形成されるようになった。2008年現在、東海市には10の住民自治センターが設置されている。以下、各地区の住民自治センターについて見ていこう。

1)北部地区の釜谷洞住民自治センター

 2009年1月現在、釜谷洞の面積は5.1?、人口は7,384人、世帯数は2,967である。釜谷洞は、墨湖高等学校などの教育機関が位置する旧市街地の中心地であり、伝統的な村落が残っている農村地域である。
 住民自治委員会は25人〜30人の規模で、公開募集で選ばれている。住民自治委員の選定は洞長中心の審議会で決定する。住民自治委員の年齢構成は40歳代後半が多く、3分の1は女性が占めている。職業構成は自営業従事者が多い特徴をもつ。現在の住民自治委員長は50歳代の男性の自営業者で、元海軍出身である。
 釜谷洞住民自治委員は、2002年の台風被害を経験した地域住民を慰労するために、2003年に「ユチョン文化祝祭」を企画した。ユチョンとは、釜谷洞地域を示す固有名詞であり、ユチョン庵やユチョン堂などの多様な伝統的な建築物が存在する。ユチョン文化祝祭を行う場所は釜谷水源地である。釜谷水源地は地域住民が春にお酒を飲みながら花見を楽しむ場所である。ユチョン文化祝祭の内容はユチョン音楽祭(民謡、伝統楽器)と歌自慢大会(小学校)になっている。なお、2008年に東海市の釜谷洞住民自治センターが江原道の住民自治センターの総合評価において「最優秀自治センター」に選定された。


写真1
釜谷洞

写真2
釜谷洞住民自治センター

写真3
ユチョン文化際が行われる釜谷水源地

写真4
釜谷住民自治委員会による森林保護

2)南部地区の北三洞住民自治センター

 北三洞の面積は16.66?、2009年現在の人口は21,119人、世帯数は7,372である。地域には小学校や中学校、高等学校、大学などの教育機関が集中している。
 2008年に、複合行政タウンとして住民自治センターが新築された。住民自治センターの設備は地域住民が自由に利用できる。住民自治センターでは書芸、農楽、スポーツダンス、ヨカなどのプログラムを提供する。住民自治センターの行事として1)陰暦1月15日の洞民和合のユンノリ大会(北坪高等学校開催)、2)洞民和合の山登り、3)セマウル婦女会による独居老人対象のキムチづくりなどを挙げることができる。
 こうした住民自治センターを運営する住民自治委員会は40歳代と50歳代の中年層住民である。住民自治委員会は21人で、女性(主に主婦)は4人である。北三洞住民自治委員長のHさんは、40歳代の男性で、アパートに居住する既住民である。Hさんは高校の先輩の勧めがきっかけとなって、住民自治委員会に入ったという。
 要約すると、北三洞はアパート団地開発によって人口が増加した新市街地であり、法制洞単位で自然部落の共同体が存続している特徴をもつ。アパート団地開発を通じて新住民が流入してきているが、地域共同財産を巡っての新住民との潜在的な緊張関係も孕んでいるのである。今後、地域共同財産の管理を含めた地域の合意形成のシステムに住民自治委員会がどのように関わっていくのかが注目される。


写真5
写真5 北三洞住民自治センター(行政複合タウン)

写真6
北三洞のアパート団地

写真7
北三洞の福祉会館(共同浴場)

魯 富子(天理大学)