美術史学とは

美術史学は、人類の歴史的遺産として今日まで継承され、なお創造され続けている美術作品に対して、 様式の分析や図像の解釈、制作過程の解明など実証的なアプロ−チを行い、 それらに関わる人間の連綿たる営みを明らかにしていこうとする学問です。

分野としては、古代から現代に至る我国日本の美術の固有性とその歴史的生成過程を考察する日本美術史、 そして日本美術の形成に大きく関わった、朝鮮、中国、そしてインド、東南アジア、中央アジアの重厚で多様な歴史を持つアジア美術史、 さらに西欧文明の基礎となったギリシャ・ローマから、ルネッサンスを経て、近代現代に大きな影響を与えた欧米の輝かしい作品群の連なる西洋美術史に分かれます。

各地域、各時代、各民族による多種多様な美術の諸相の独自性を検証し、そこに様式の伝播や図像の伝承といった美術史的方法論を展開していきます。 過去の文化財、文化遺産としての美術作品のみなら現代に伝わる人類の英知と感性の結晶として、受容再生のコンテクストの中で研究把握するものです。 時代としては古代から近世・近代を経て、現代美術の成立までを考察の対象とし、 ジャンルは絵画・彫刻・工芸はいうまでもなく、さらに建造物、考古遺品や古典籍なども含めます。

神戸大学美術史研究室の特徴

神戸大学美術史研究室の特徴は、それぞれの学生が一つの分野のみに集中するのではなく、様々な分野の事柄について意見を交わしあい、常に幅広い見識、観点、方法論を持つことを目指しつつ研究を行っていることです。 研究室は、学部生と院生、留学生が自由に集いあう場であると同時に、学生に外部の研究者との豊富な交流の機会をもたらす場となっています。 また、実作品と向き合うことをあらゆる研究の根幹とし、研究室では積極的に見学会を企画、実施しています。 その他、学生の勉強を助ける基礎資料を備えた場として、学位論文、演習報告をめぐる活発な議論の場として、また学生同士、教官との団らんの場として等々、研究室は多彩な役割を担っています。

卒業生の進路

卒業生は、一般実社会に就職して活躍しているもののほか、大学院を修了して美術史学を学んだ知識と経験を生かし、学芸員として、美術館、博物館などの現場で研究の道を歩むものが多く、今日まで伝承された文化財の保護と活用に加え、現代社会への創造的で開かれたニーズに答えるべく、実践的で幅広い活躍が期待されています。


神戸大学文学部美術史研究室 制作
arthist@kobe-u.ac.jp