
Last updated at 11 AUG 1998
6月15日より16日まで、博物館実習の事前実習とゼミ旅行を兼ね、滋賀県の主に湖東に位置する寺社、博物館、美術館を訪れました。百橋教授の引率のもと、美術史研究室のメンバー、博物館実習Bの受講者、美術史に興味を持つ学生など総勢19名が参加しました。我が国の貴重な文化財の一端に接する機会としてだけではなく、それらの文化財を収蔵する公私の施設において、いかに文化財の保存と展示が計られているかを比較、考察しながら見学することができ、他専攻の方にとっても有意義な実習であったと思います。
【1日目】
午前10時に長浜駅に集合、すぐに船で竹生島へ向かう。約1時間半と短い時間であったが、蒔絵、建築彫刻、障壁画について大学院生の簡単な説明も交えつつ、都久夫須麻神社および宝厳寺、同宝物館を見学した。都久夫須麻神社拝殿の繊細な蒔絵装飾と、同じく唐門の力強い彫刻は特に素晴らしく、じっくりと見学させていただいた。
昼食後、JR高月駅へ移動し、渡岸寺の収蔵庫に保存されている国宝十一面観音立像(9世紀初)、重要文化財の大日如来坐像(平安後期)などを拝観した。由来等について住職から説明を受けた後、これらの彫刻を前後左右をまわりながら、心ゆくまで観察することができた。やや腰をくねらせた姿と木彫の柔らかな表情をもつ十一面観音像の優美な姿は忘れがたい印象を与えた。
その後、長浜の大通寺にて、桃山時代の遺構と伝える大書院や障壁画などを見せていただいた。様々な時代の建築部分や遺品が入り混じっており、評価の難しいものが多いが、文化財として整理されていない歴史遺品のそのままの姿を見ることができた。
【2日目】
朝、JRで彦根へ移動し、彦根城および彦根城博物館を見学する。博物館には彦根藩主であった井伊家伝来の品々が保存、公開されており、この日は特別展として湖東焼の名品が陳列されていた。一部の者のみで博物館に入ったが、学芸員の方に説明をしていただきながら、時間をかけて見学した。中には、安政年間頃の御殿の復元や能舞台などもあり、非常に興味深い構成であった。
昼食後、大津へ移動し、県立琵琶湖文化館を見学した。琵琶湖文化館では、学芸員の方が博物館の概要、展示の方針、展示作品について解説をしてくださり、博物館のあり方についても、また滋賀県の仏教美術の遺品についても、大変勉強になった。なかでも、最近重要文化財に指定されたという宝蔵寺伝来の如意輪観音菩薩像(鎌倉時代)は、東寺に伝来した平安末期の十二天図像の様式をさらに耽美的にしたような印象を与えるもので、興味深かった。
最後に、JR瀬田からバスで県立近代美術館を訪問し、「目黒雅叙園展」及び常設展示を見学した。近代美術館には、今春より卒業生の田平さんが勤めておられ、簡単に美術館と特別展について紹介していただいた。
最後になりましたが、各地でお世話になった方々に厚くお礼申し上げます。
去る八月一日、二日と、神戸大学美術史研究室のメンバーで、富山県高岡市の称念寺の寺宝をX線調査しました。称念寺さんは高岡でも片手の指にはいるほどの大きな真宗本願寺派の寺院。当日は北陸といえども真夏の最中、汗だくだくになりながらの調査となりました。大学の研究室から重たい機材を車に積み、東名、北陸と高速道路を突っ走り、お寺に到着は午後三時半頃でした。
到着早々、機材の組立、寺宝の確認、即席の暗室を作り上げ、いざX線の撮影、というときに、百橋先生の「なんだこりゃ」の高い声。よく見ると、フィルム(約三十p四方)が一枚一枚コートされておらず、全てまとめて裸のまま。あわてて黒画用紙を買いに行き、一枚一枚画用紙で造った袋に入れ直してのしきり直しとなりました。前回の他像と大きさが近いこともあり、そのデータが役に立ち、初めのテストでほぼOKということで、本番に入りました。一枚撮るのに八分。なかなかはかどらず、夜八時位までねばったのですが、晩御飯をご予約いただいているとのこと、残りを明日に回し一時中止しました。
晩は、富山湾のおいしい魚介類に舌鼓を打ちながら、調査の反省をし、お寺が神戸大学のOGで現名古屋城博物館学芸員でいらっしゃる塚原明子さんのご実家ということもあって、昔話などで盛り上がり、楽しい一時を過ごさせていただきました。
翌日、朝はお寺の行事があり、我々はその間に高岡見物をして過ごし、高岡の文化と伝統にふれ見解を新たにしました。調査は午前十時半頃から再開し、難問と考えていた高僧像の倚像に挑戦。しかし、機械の高さを調節するなどの工夫を加え、何とか無事成功しました。出来上がりの写真を見てびっくり。この像は「歯吹き」の像だったのです。後世の表面塗り直しのため口は閉ざされていたのですが、X線写真には克明にその口元に歯が写っていました。外側から観察の上では、時宗の祖一遍上人を彷彿させたのですが、合掌しているところや、足を垂下し、さらに口を開いているところは、兵庫・昌林寺善導大師像、福岡・善導寺善導大師像等(但し、足は結跏趺坐しているらしく、衲衣のみ垂下する)に近いようにも思われ、今後の尊像比定に期待がかかります。
撮影後、写真が乾くのを待つのもかねて、高岡ご出身の百橋先生の名案内に導かれ、再び高岡見物に行きました。比較的楽なスケジュールでしたが、暑さと早起きのために程良く疲れ、家についたときはメンバーのみんなも快眠出来たのではないかと私は想像します。(文責 寺島典人)
過去の研究室の活動