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最近の著作から 2006年度

文学部広報誌『文学部だより』の「最近の著作から」欄から文学部教員の著作を紹介します。

これまでの著作紹介

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2006年

『地域研究の課題と方法アジア・アフリカ社会研究入門【実証編】』 北原 淳・竹内 隆夫・佐々木 衛・高田 洋子(編著)

『地域研究の課題と方法アジア・アフリカ社会研究入門【実証編】』 北原 淳・竹内 隆夫・佐々木 衛・高田 洋子(編著)

本書は、現代社会の構造変動を「地域研究」の観点から研究するための課題と方法を体系的に解説した。このために、地域社会(都市と農村)とその構成要因としての家族・エスニシティ・ジェンダーの構造と変動を主題とし、地域社会の枠組みに影響を与える国家的、国際的な経済、政治、文化(とくに教育、宗教)をも検討した。

2006年12月 文化書房博文社 2,835円

『カラヴァッジョ』(西洋絵画の巨匠11) 宮下 規久朗(単著)

『カラヴァッジョへの旅』 宮下 規久朗(単著)

私の研究対象であるイタリアの画家カラヴァッジョの本格的な画集。ほぼすべての真筆作品に、最新の研究成果を踏まえた解説を付し、さらに、画家の波乱の生涯のほか、代表作に秘められた深い意味や、知られざる日本との関係などについても詳述した。世界最高の印刷技術によるカラー図版のほか、本文中の挿絵は、私が撮ったもののほかに、イタリアに依頼して撮ってもらった貴重なものが多い。最近新たに発見された作品も世界ではじめて収録するのに成功した。画集であるにもかかわらず、多くの新聞雑誌で絶賛された。

2006年11月 小学館 3,360円

『イタリア・バロック―美術と建築』 宮下 規久朗(単著)

『イタリア・バロック―美術と建築』 宮下 規久朗(単著)

わが国初のイタリア・バロックの概説書にして、それを現地で味わうための入門書である。ローマ、ヴェネツィア、ジェノヴァ、トリノ、ナポリ、バレルモといった都市別に重要なモニュメントについて解説したほか、際立った天才たちの成果をまとめて紹介し、実際に見て回ることを念頭において編集した。写真の大半を私が撮ったのだが、そのために何度もイタリアに行き、脚を棒にして無数の写真を撮りためた。基本的に出不精で怠惰な私には割に合わぬ難儀な仕事ではあったが、よい経験になった。すでに何人もの人々が本書を手にして実際にイタリアを旅してくれている。

2006年11月 山川出版社 2,940円

『都市空間の地理学』 加藤 政洋・大城 直樹(編著)

『都市空間の地理学』 加藤 政洋・大城 直樹(編著)

本書はいわゆる「都市地理学」の本ではなく、「都市空間」に関する色々な見方・考え方を紹介する本です。登場するのは地理学者ばかりではありません。シカゴ学派社会学、遊歩の思想家ベンヤミン、都市計画家石川栄耀らは1920~30年代に、19世紀中半以降資本主義の発展と共にとトモノ・カネの流れを加速化させるべく膨張してきた結果生じた空間の矛盾に対して新たな視線を向けました。この都市論の叢生期を起点に、第二次世界大戦後のバリのシテュアシオニスト、ドセルトー、合衆国の地理学者たちによる都市の心理地理学やインナーシティの「探検」、時間地理学の誕生、ルフェーヴルやハーヴェイらの都市空間論、ジェントリフィケーションやゲイテイッド・コミュニティの形成が続きます。これら新たな都市空間の展開に呼応して台頭してきたロサンゼルス学派の都市研究集団についても紹介します。

2006年9月 ミネルヴァ書房 3,150円

『「知識人」の誕生 1880-1900』 クリストフ・シャルル著、白鳥義彦(訳)

『「知識人」の誕生 1880-1900』 クリストフ・シャルル著、白鳥義彦(訳)

「知識人」は、どのようにして生まれてきたのだろうか。本書は、フランスにおいて近代的な「知識人」が誕生したドレフュス事件期「1894年~)を中心に詳細に分析を進めることによって、この過程を明らかにする。本書の基本的な視点は、「知識人」を社会的なカテゴリーとしてとらえるところにあり、個別的な知識人の英雄史といった観点とは対置される、構造的な分析が行われている。文学の前衛と政治との交錯、当時進められた高等教育改革による若手教員や学生の増大、あるべき「フランス」の理念をめぐる対立、といったことが、「知識人」の誕生をもたらしたのであった。著者のシャルル氏は近現代史の分野で今日のフランスを代表する研究者であり、社会史、大学史、文化史といった幅広い領域において数多くの著作を公刊している。

2006年6月 藤原書店 4,800円

『院政期の内裏・大内裏と院御所』 髙橋 昌明(編著)

『院政期の内裏・大内裏と院御所』 髙橋 昌明(編著)

平安京・京都研究会は、一九九四年以来、平安京や京都にかかわる文献史学・考古学・建築史学の先端研究を結集する研究集会を開催してきた。本書は、そのうち王宮や院御所にかかわる四度の研究集会における研究成果を、髙橋昌明が編者となって学術論文集の形に再構成したもの。16人の第一線研究者の執筆になるもの である。

扱う主な時期は、これまでの院政研究では比較的手薄であり、しかも現在学界の関心が集まりつつある後白河院政期で、主たる対象は同期の内裏・大内裏、開院内裏、法住寺殿・六条殿などである。後白河院政期の前提もしくは起点という位置づけのもとに、白河・鳥羽両院政期の白河地区や鳥羽殿についても取り上げた。

2006年6月 文理閣 6,300円

『パリ モダニティの首都』 デヴィッド・ハーヴェイ著(大城直樹・遠城明雄訳)

『パリ モダニティの首都』 デヴィッド・ハーヴェイ著(大城直樹・遠城明雄訳)

著者のハーヴェイは今日最も著名な地理学者であり、マルクスの創造的読解を通じて独自の史的=地理的唯物論を展開しているユニークな研究者ですが、本書はその手法による、都市史の様相を呈したバリの歴史地理学的研究です。19世紀のパリは、都市騒擾と帝国の祝祭、革命と万国博覧会そして大衆消費、手工業的職人世界と地方からの大量移住者と機械化の進展に伴う単純労働化、こうした相反するものが騒々しく括抗するまさにその渦中にありました。ハーヴェイは、バルザックやゾラらのバリ表象や、不動産資本の特権化、抽象的な労働の浸透、女性の置かれた状況、スペクタクルなものの前景化、自然意識の変容等々、実に多様な視角から、パリにおけるモダニティと資本主義の連動性について説得的に論じ、パリの都市景観が「創造的破壊」を通じて今日見られるような景観となっていくその根底に、ヒト・モノ・カネの循環・流通を加速化するためのインフラ整備があったことを暴きだしていきます。

2006年5月 青土社 4,800円(税別)

『アクセントの法則』(岩波科学ライブラリー118) 窪薗 晴夫(単著)

『アクセントの法則』(岩波科学ライブラリー118) 窪薗 晴夫(単著)

どんな言語や方言にも、それぞれに美しい規則の体系がそなわっています。私たちは幼いとき、造作もなくその体系を身につけ、大人になった今は、無意識にそれを操ってことばを話しているのです。本書では標準語や鹿児島弁のアクセントを例に、一見混沌とした言語現象に潜む法則を見つけだし、私たちの頭の中で起こっていることを探ってみました。私たちが日常的に使っている言葉の中に―そして私たち自身の頭の中に―美しい規則の体系が存在していることを解説した本です。

2006年4月 岩波書店 1,200円

『西洋美術史』 宮下 規久朗(共著)

『西洋美術史』 宮下 規久朗(共著)

西洋美術史の概説書はあまたありますが、本書は、最新の研究成果に基づき、簡潔でありながら必要な事項を網羅した通史です。あまりに詳しい概説書は辞書のように使われはしても通読されないものであり、かといって教科書のように簡潔すぎるのも味気ないのですが、本書はちょうどよい分量で、短時間で通読できます。比較的若い研究者がそれぞれ得意とする分野を分担執筆しており、いずれの章も高水準の内容で充実しています。私は16世紀のルネサンスから18世紀半ばにいたる長い箇所を担当しました。十数年前、別の本に近現代美術の通史を執筆したことがあるので、いずれ古代と中世の部分も書いて、私なりの通史をまとめたいと思っております。

2006年4月 武蔵野美術大学出版局 2,200円

『列島の古代史5 専門技能と技術』「絵画と絵師」(PP.11-52) 百橋 明穂(共著)

『列島の古代史5 専門技能と技術』「絵画と絵師」(PP.11-52) 百橋 明穂(共著)

まず古墳時代の装飾古墳壁画と、仏教美術に導入に始まる飛鳥時代の古代絵画との質的な相違を明確にし、日本の古代絵画が東アジア世界の絵画技術や画材・画題の水準に達していたことを作例を通して解説した。また最近発掘された白鳳・奈良時代の寺院跡からの壁画断片と法隆寺金堂壁画との比較検討を行い、飛鳥朝における百済・高句麗との交流を再検討した。高松塚古墳壁画やキトラ古墳壁画の壁画技術と画題が中国・朝鮮半島と密接な関係をゆうすることを明らかにした。正倉院文書などを駆使して画工司や造東大寺司の絵師達の系譜と作画機関の時代による変貌を解析し、彼らの画業の実態を詳細に分析した。

2006年2月 岩波書店 2,900円

『中央ヨーロッパの可能性』 大津留 厚(単著)

『中央ヨーロッパの可能性』 大津留 厚(単著)

冷戦構造の中で分断されていた東西ヨーロッパは、1989年のベルリンの壁の崩壊以降、統合の度合いを強めています。それは具体的にはEUやNATOの拡大という形をとっていますが、人や物の動きが自由になって、統合ヨーロッパは、もっと深く人びとの意識に根ざすものになっていると言えるでしょう。しかし他方でヨーロッパの統合が進むほど、逆に歴史や言語や文化に根ざす個々の集団の個性も強く自覚されることになりました。特に中央ヨーロッパに住む人びとは、東西ヨーロッパの分裂の時代には、東西どちらかの陣営に属することを求められ、あるいは「中立」を標模することが求められました。東西分断の解消は中央ヨーロッパの人びとの交流を再開させました。しかしもともと「中央ヨーロッパ」という概念が明確に存在していたわけではありません。地理的にヨーロッパ中部に属する多様な人びとの集団というのが実態でしょう。この本は、そうした多様な人びとの集団がそれぞれの個性を保持しながら共通の歴史を作り上げてきた経験の総体として中央ヨーロッパを再構成しようとするものです。その意味で実験的な作品ですので、皆さまに読んでいただき、ご批判をいただければ、と思っています。

2006年2月 昭和堂 3,300円

『フランス・ルネサンス王政と都市社会―リヨンを中心として―』 小山 啓子(単著)

『フランス・ルネサンス王政と都市社会―リヨンを中心として―』 小山 啓子(単著)

本書は、近世初期フランスの王権と「良き都市」の間で結ばれていた協調的な関係、そして宗教戦争を経てその関係のあり方が変容していく過程を、王国第2の都市リヨンの側から照射したものです。大きな問題関心としては、「共同体」の秩序と「国家」の秩序、伝統的価値観と新しい価値観が複雑に交差する時代において、そこに生きる人々がどのような選択をしていったのかということを明らかにしたいと考えていました。そこで、この時期特有の諸権力の構造、合意形成のあり方、王権と都市の「対話」の場であった儀礼・祝祭における多元的なアイデンティティの主張行為、都市エリート層の再編に関する分析を通じて、広域権力と都市社会の具体相に接近することを試みました。

2006年1月 九州大学出版会 5,400円

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